第511話 樺太視察その2

 樺太島留多加港を目指して鹿島港を出航する。


蒸気機関外輪式推進装置付機帆船型鉄甲船戦艦、武甕槌・船長・真田幸村。


同行者、お初、お江、桜子、小滝、ラララと、いつものメンバーに森力丸。


「御大将、海に出るのはひさびさに御座います」


と、森力丸は太平洋の大海原を見ながら喜び顔。


うちの家臣達は海が好きだ。


内政を任せてしまっている森力丸も例外ではない。


「戦いに赴く出航ではないから心も軽く俺も楽しめる」


自分の子供達と会うのが主な目的な為、緊張がない。


「昔は船に滅法弱かった御大将が、今では世界の海を股に掛ける海の覇者ですからね、おもしろいものです」


「覇者などと言う言葉は使うな。覇者はあくまでも織田信長様」


「大丈夫ですよ。海に、船に関して言えば上様が御大将の事を認めていますから」


「まぁ~それでもだ」


「はい、この船の中だけの話にしておきましょう。しかし、素晴らしいですよね、風や海流を気にせず進める船は」


「未来ではこれが普通だからな、未来でも船は大量の輸送をするのに大陸間を走っている。400年後も船は主要な輸送手段であり、兵器でもある」


「変わらないのですね」


「性能的には大幅に向上するが、基本的には変わらないな」


「海はいつまでも海」


「地球が人が生活出来るのは海のおかげだったりもすると習ったぞ、確か気候を安定させるのに海の大量の水が役に立っているなどな」


「まさに、海は母と言ったところでしょうか?」


「ははは、時には荒れ狂うから母と言うのも悪くないな」


「確かに母親は恐い、ははははは」


ひさびさに力丸と雑談に花を咲かせる。


俺の素性を知る人物となら何も隠さず話せるから気が楽だ。


「ところで御大将、折り入ってお頼みしたき事があります」


「遠慮する事はない間柄じゃないか、なんだ?叶えられることなら叶えたいが」


「はっ、我が娘、紗奈を須久那丸様に嫁がせたくお願い申し上げます」


「え?娘いたの?」


俺は家臣の家族関係にまで踏み込む事はしないかったので家族構成を把握していない。


「はい、10になる娘がおります。なかなか可愛い利発な娘がおります」


「その姫を須久那丸にか?知っての通り・・・・・・」


と、言葉を続けようとすると力丸が、


「わかっておりますとも、女を泣かせるような事はしたくないとの口癖は、なので頃合いを見計らってお見合いをしていただけないでしょうか?それまでは他の他家の娘などとの婚姻の約束をせずに」


「それなら、文句はないが樺太は厳しい土地だぞ?それでも良いのか?」


「はい、娘は御大将と違って寒いのは平気ですので」


と、笑っていた。


「ははははは、そうか、本人も良しとするなら良いだろう。その話、進めて良いぞ、来年の雪解けを待ち蝦夷地の港あたりで見合いをするようにいたせ」


「ありがたき幸せ、これで娘が嫁げましたら、御大将と縁続きになります。森家にとって光栄な事」


「ははははは、気が早いな。兎に角、両者が気に入らねばならぬからな」


「大丈夫ですよ。うちの娘、可愛いですから」


親とは自分の娘が一番可愛い物だ。


俺だって娘達はキュンキュンするくらいに可愛いのだから。


どういうわけか、俺に似ず母親に似てくれたので良い顔立ちだ。


彩華以外にも嫁ぎ先考えないとならないのだろう。


そのあたりは茶々に任せたほうが無難だな。


などと考えながら船は一路北に向かった。

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