第507話 嫁?
「是非とも我が娘を嫁に貰っていただきたい」
・・・・・・嫁???いっぱいいるぞ?ん?側室?
帰国していた前田利家が茨城城に来ていた。
「利家殿、側室はもういりません。と、言うか、許してもらえないので」
「あぁ、違います。違います。龍之介殿に是非とも我が娘、福を貰っていただきたいのです。側室の子で歳は13歳、松が是非とも黒坂家に嫁がせよとうるそうてなりません。松が育てたせいか気性もよく似ており、親のひいき目ですが、外見も悪くはないと思います」
「ははは、勘違いしました。なるほど、龍之介の嫁ですか、龍之介、どうする?父としては政略婚などは一切気にせず好きになった者と結ばれれば良いと思っているが、利家殿の娘となれば話しは別、どうだ?」
「父上様、好いている女子などはおりません。父上様の申しつけなら前田様の御息女に不満など有りません」
「よし、まぁ~会わずに決めるのもお互いのためにはならないだろうから、一度見合いをしてみて決めるのではどうか?」
「ですから、父上様の申しつけならどのような者でもかまいません。子が生まれさえすれば」
「それは、失礼だぞ龍之介。妻とは二人三脚、同じ道を歩めると思える者でなければならない。子を産む道具など考え違いを致すな。俺が家を空けられるのも茶々が俺と歩むべき物の考えが一緒だから家、常陸を任せておられるのだ」
と、俺が龍之介を叱ると前田利家は、
「まあまあ、そう怒らないであげてください。龍之介殿が福を教育すれば良いのですから」
戦国武将の価値観とのズレははっきり言って埋まっていない。
女性が他家に嫁いだ場合、その家で教育されその家の色に染める、マインドコントロールに近しい考えは俺は否定的だ。
「利家殿、俺は知っているとは思いますが、女を泣かせるような事はしたくはないのです。辛い思いをさせるようなことは」
「えぇ、わかっていますとも。ですから、松が黒坂家なら大丈夫と、言っているのですから。本日厚かましくも連れてきております。どうかお目通りのご許可を」
「えっ、連れてきているの?」
「はい、廊下で控えております」
「それなら中に入って貰ってかまいません」
小姓が襖を開けると、スーメタルちゃんのような娘が部屋に入ってきた。
すぐに深々と頭を下げてしまったが、俺の女スカウターが見逃すはずもない、可愛い。
龍之介を見ると何やらもじもじしている。
「福とやら、面を上げて龍之介に顔を見せてやってはくれぬか」
「これ、福、右府様のお許しだ。顔を見せなさい」
と、利家が言う。
すると、福は背筋をピンと伸ばし、
「前田利家が娘、福と申します」
「常陸守真琴だ。これが、息子の龍之介信琴」
と言いながら龍之介を見ると顔を真っ赤にして硬直していた。
あっ、一目惚れしちゃったのね。
初心な息子だな・・・・・・。
俺に似なかったのね。ははは。
利家と目線を合わせると俺と利家は静かにうなずいた。
「どれ、二人だけで庭でも歩いてこい」
龍之介の背中を叩くと硬直した龍之介は我に返り、福を連れて庭の散策に出て行った。
「利家殿、決まりましたね」
「はい、良い娘でしょ」
「ええ、我が側室に迎えたい位ですよ」
「ははははははは、茶々様に怒られますよ」
茶々よりお初のほうが物理的攻撃をしてくるから恐いのだが。
一目惚れをしてしまった龍之介が嫌がるはずもなく婚姻を進めて欲しいと言ってきたのは、その晩の事だった。
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