第506話 黒坂龍之介信琴
武丸の元服に合わせて名前を考えた。
尊敬する祖父の名、『龍之介』そして織田家から一字貰えないかと織田信忠に手紙を送ると『信琴』と名付ける許しがきた。
烏帽子親には、伊達政宗が父、伊達輝宗に依頼する。
伊達政宗に頼みたいところだが、南米にいるため呼び寄せるのは困難、そこで伊達輝宗だ。
隣国の伊達家とは、家臣に伊達政道がいるため極めて良好だ。
快く承諾してくれ、1604年5月1日
武丸の元服の儀が茨城城で執り行われた。
「これより、武丸改め、龍之介信琴(りゅうのすけのぶこと)と名を改めよ。また、幕府より元服の祝いに従五位上下総守(じゅごいしもうさのかみ)に任じられた、下総は我が領地でもある、しっかりと励め」
「はい、父上様」
と、龍之介は真新しい烏帽子をしっかりと被り頭を下げた。
元服の儀に列した家臣達は祝ってくれる。
「おめでとうございます」
「おめでとうございます」
「おめでとうございます」
茶々は嬉し涙を流さぬようぐっとこらえている。
祝いの席に涙は禁物だからだ。
宴席のあと、俺は茨城城天守最上階に龍之介と二人で登った。
「龍之介、幕府に臣下の礼をとり家臣として生きよ」
「え?父上様、黒坂家は今まで対等に近い関係でありましたのに、なぜにございますか?」
「知っていると思うが、俺は信長様、信忠様を助けた実績があるからこそ、この立場が許されている。龍之介は違う。もし、俺に何かあれば黒坂家は宙に浮く存在となる。その時、幕府が危険視しないとは限らない。よって、龍之介、お前の代からは幕府の臣下になり他の大名達と同じように振る舞わねばならぬ」
「はい、わかりました。しかし、父上様はまだ隠居なさるつもりでは御座いませんよね?」
「ははははは、隠居か、まだまだせぬぞ。世界を変えるために、未来を変えるために働き続けるのだから」
「未来を?」
「これより申すことは、他言無用」
そう言って俺が未来人であることを伝えると龍之介は今まで見たこともない顔をして驚いていた。
「父上様が未来の民人・・・・・・」
「そうだ、未来は争いが続く醜き世界、その世界に楔を打つのに俺は働き続ける」
「わかりました。この私も若輩ながら力になりますよう励みます」
「うん、頼んだぞ」
このあと、龍之介は安土城に登城して織田信忠に臣下の礼をとり、正式に幕府の家臣となった。
信忠からの手紙では気にすることはなかったのに、とは来たが黒坂家を存続させるためにはどこかで必ず臣下にならねばならない。
なら、現在対等に近い関係の俺が生きているうちに済ませておくのが良いと判断した。
そのほうが、領地替えなど申しつけられずに済むからだ。
判断は当たりだったようで特に命じられる事はなかった。
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