第497話 イスパニア帝国国王フィリッペⅢ世
「俺は高山右近の言うとおりにしただけなんだ、なっ、なぁ~助けてくれ。イスパニアは全てくれてやるから、俺を神聖ローマ帝国に逃がしてくれ、あなた様は織田信長様の軍師なんだろ?」
と、マドリードから籐で編まれた籠に入れられ運ばれてきたフィリッペⅢ世の言葉をラララがわざわざ訳してくれた。
「ラララ、もう良い。なんと叫ぼうと処刑は決まった事」
フィリッペⅢ世の通訳を止めさせた。
負け犬の遠吠え。
ひたすら声が枯れるまで叫んでいたが、雑音でしかない。
「フィリッペⅢ世、貴様の所行は織田信雄様を抹殺しただけではない。アメリカ大陸への侵略で多くの民人を殺(あや)めしことへの責任者として死んで貰う」
俺の言葉をラララが訳す。
そうすると静かになった。
他国を侵略し、大量虐殺を部下達がしていたのは知っていたのだろう。
イスパニア・ポルトガル人のアメリカ大陸での大量虐殺。
金品強奪・奴隷化。
そして、渡航により流行病をもたらせた行為。
それは、繁栄した文明を時代から消し去るほど多くの人を殺した。
病気は間接的とは言え含めれば、俺が知る歴史上最大虐殺をしたのは大航海と言う時代だ。
その責任をフィリッペⅢ世に取らせる。
「宗矩、舌を噛まぬよう猿轡をはめさせよ」
「御意」
一部始終を見ていた織田信長。
「ぬはははははは、真琴なら逃がすかと思ったが、他民族侵略も絡めば容赦なしか」
「そうですね。この男を他国侵略の犯罪人の見せしめに出来るなら、適任なので」
「よかろう、後は真琴に任せよう」
「各国からの見学者が集まり次第、釜茹で茹でると言うか揚げます」
「真琴、揚げ物好きだな」
「なんか、勘違いされそうな言い方しないでください。食べる訳じゃないんですから」
「ははははは、わかっておるは」
そう言って織田信長はマントをバサッと音を立てながら自室に入っていった。
「フィリッペⅢ世、一週間門前に晒したのち処刑といたす」
フィリッペⅢ世は猿轡をしながら叫び涙を流し、手足を縛られた状態で悶えていた。
武士のような潔さは、ない男のようで見ていて胸くそが悪かった。
高山右近がらみだから、妖魔が憑いているのかとも思ったがこの男には憑いていないようだ。
あの時逃げた妖魔はいずこに行ったのだろうか。
必ず倒さねばならぬ者。
俺が、陰陽師として俺がこの時代にいるのは、その必要性があるからだと思うのだが思い過ごしなのだろうか?
フィリッペⅢ世に妖魔が取り憑いていると思っていたのだが。
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