第489話 歓迎の宴

 ジブラルタル城の完成式の宴会を本丸御殿で行うように準備してある。

 

本丸御殿の100畳の広間にはブッフェ形式で料理を並べた。


唐揚げ、とんかつ、カレー、ラーメン、天ぷら、伊達巻き、たこ焼き、お好み焼き、ポテトチップス、萌とケチャップで書いたオムライス、納豆餅、ずんだ餅。


酒は『御神水仕立て御祓い済み御神酒・黒坂』シリーズを用意した。


21世紀なら皆が知っている料理だが、この時代はそうではない。


その見たこともない料理に驚く客人達。


その腹を満足させられるだけ用意してある。


唐揚げのなくなるのが早い早い。


料理方になっていた紅常陸隊は大忙しで揚げ物を次々に揚げている。


人の心を掴むときは先ずは胃袋から掴む。


それは、饗応役を以前に経験しており知っている。


盛り付けられる皿は薄い薄い磁器。


描かれているのは勿論、美少女。


コップはガラスだ。


すべて日本製。


見る者が見ればそういった物を作る技術を持っている『国』であるのがわかる。


オスマントルコ帝国次期皇帝アフメトⅠ世が通訳を通して、


「城の装飾も素晴らしいが料理も素晴らしい、そして、このような器を作る技術。素晴らしい。どうか、我が国と不可侵条約と言わずに友好的同盟をお願いいたします。いや、我が妹を差し上げます。どうか、兄と呼ばせてください」


と、言ってきた。


軍事だけでなく、完全に文化水準が飛び抜けて高い国に近づこうとするのは当然だ。


「前向きに検討いたします」


と、だけ曖昧な和やかに返事をした。


イギリス帝国のイギリス海軍提督フランシス・ドレークもまた、


「素晴らしい。このような陶器、是非とも祖国に欲しい。どうか、同盟国となり貿易をしていただきたい。聞くところによると、常陸様は女性がお好きだと。私の16歳になる娘を嫁がせたい」


と言ってくる。


「前向きに検討いたします」


とだけ返事をする中、鋭い視線を感じだが、うん、放置しよう。


・・・・・・。


神聖ローマ帝国ルドルフⅡ世の使者・ルーラント・サーフェリーは料理を食べ、難しい顔をしていた。


「負・け・た」


そう聞こえたが話せる感じではないので遠目に見ている。


心が折れたのかもしれない。


軍事に負け、文化でも負けた。


そうなれば残される道は玉砕覚悟か、屈服に近い同盟の申し出しか残されていない。


イスパニア帝国と心中するとは考えにくい。


バチカンの使者のルイス・ソテロも同じような顔をしていた。


敵方で唯一違う表情をしていたのは、ガリレオ・ガリレイだけ。


見る物すべてに興味を持ち、接待をしているうちの家臣に質問攻めにしていた。


「はははは、そんなに慌てて聞かなくても、良かったらまた遊びに来てください」


「来て良いのですか?」


「勿論ですとも、ああ、一つ忠告を太陽は見つめると視力を失います。投影法と言うやり方があるので教えますね」


と、望遠鏡に白い板を取り付けてレンズから出た太陽光線を白い板に映して間接的に観測するやり方を教えた。


「なっなっなんで、そのようなことまで知っているのですか?」


当然驚くよな。


「ふふふ、禁則事項です」


と、唇に人差し指を当ててそれ以上のことを語るのはやめた。


織田信長はと言うと、上座でカツカレーを食べ満足げにしていた。


この先どうなるかはすでに織田信長は予見しているようで、何も言わずモクモクとカツカレーを食べる織田信長。




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