第464話 バチカン使者・ルイス・ソテロ

 マイアミ城に戻ると、十字が大きく描かれた帆を張る船が見えていた。


船尾には二本の鍵をバッテンにした旗が見える。


その旗はバチカンの国旗。


どうやら俺が不在中に来航したらしい。


俺も接岸する。


加藤清正が、


「バチカンの使者が先ほど来ました。上様は右府様の同席で会うと申して待たせてあります」


「あいわかった。着替えてすぐに広間に行こう」


俺は甲冑から着替えて、広間に向かう。


すでにバチカンの使者は木板の上に直接座らされていた。


俺は上座の上段の間の椅子に座る。


少し待つと織田信長は上々段の間の椅子に座った。


「俺は対外的事を任されている、右大臣黒坂常陸守真琴である。こちらが日本国を統べる王、太政大臣織田信長様だ」


俺が自己紹介をする。


通訳の弥助がそれをイタリア語の言葉で通訳する。


弥助は奴隷時代に多数の言語を修得していたそうで、イタリア語も話せていた。


織田信長に『王』と言ったのは実行支配している人物が最早、『帝』ではないからだ。


朝廷には政治の実権はない。


↓イタリア語

「私はバチカン・ローマ教皇クレメンス8世の使者のルイス・ソテロと申します。率直に申し上げます。ローマ教皇はこの度のイスパニアを中心についてした争いを止めたいと仰せです」


ルイス・ソテロ・・・・・・伊達政宗に会うルートではなく、俺と会うルートになったのか?


「なにをふざけた事を言うか、友好的使者であった我が息子の信雄を殺しておきながら、ぬけぬけと」


織田信長が怒り顔で言う。


↓イタリア語

「誤解です。バチカンはローマ教皇はその件を知りませんでした。イスパニア帝国皇帝フィリッペが勝手にした事なのです」


実は俺は薄々そうでないだろうかと思っていた。


バチカンに案内される前に、高山右近の言葉に乗せられたイスパニア帝国皇帝フィリッペ三世が行ったのではと。


無敵艦隊と呼ばれる艦隊を持つイスパニア帝国は、日本国を敵に回す事を選んだのではと。


織田信長は俺を見ている。


俺に任せると言うことだろう。


「ローマ教皇の言い分はわかったが、織田信雄様を殺した者の裁きをせねばならぬ。和睦の条件はイスパニア帝国皇帝フィリッペ三世と高山右近の首有るのみ」


↓イタリア語

「そ、それは出来ません。フィリッペ三世の首、ローマ教皇でも自由には」


当たり前な話だ。

我々に負け続けているとは言え、イスパニアはまだ戦う余力を持っている大国だ。


しかも、他国と対日同盟を結んでいる。


「なら、イスパニアの事は我々に任せてバチカンは他の国に対して対日同盟の解消を命じていただく、これをするならバチカンとは不可侵条約を結んでも良いですが」


↓イタリア語

「・・・・・・重要な事なので、持ち帰って返答したいですがよろしいですか?」


「でしょうね。3ヶ月待ちます。3ヶ月はこちらからは攻撃はしません。ただ、期限を過ぎれば総攻撃をかけヨーロッパ支配の戦を始めます。そんな戦力がないだろうなどと高をくくるのはやめておいた方が良いですと注告しておきます」


↓イタリア語

「脅しですか?」


「謙遜は何も生みません。日本国の兵力、造船力はあなた方が想像出来る物より200年は軽く進んでいるでしょう。あなた方は我々には勝てない」


と、俺が言うとルイス・ソテロは馬鹿にしたように笑いを浮かべた。


「ははは、200年か。真琴、自分自身が謙遜しているではないか、400年は進めているくせに」


と、織田信長は笑っていた。


↓イタリア語

「そんな絵空事で我々は屈服いたしません。日本国の造船力が進んでいるのは聞いていますが、そんな何百年もとは」


「一見は百聞にしかず、見るがよろしかろう」


俺はルイス・ソテロを港に連れ出した。

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