第454話 再びの出撃

 新黒坂水軍艦隊は形になった。


なら、目指すべき地が俺にはある。


初老の織田信長にいつまでも任せている訳にはいかない。


カリブ海・大西洋の情勢が気がかりだ。


パナマを経由した輸送船からは特段不利になっていると言う連絡もないが、良い知らせも来ている訳ではない。


俺を焦らせないよう情報制限をしている節が感じられる。


真田幸村・柳生宗矩・前田慶次・真壁氏幹・佐々木小次郎を集めて、再びカリブ海を目指す事を命令する。


お初、お江、桜子、小滝、ラララ、も、行くと言うのは仕方がないだろう。


もう、俺の側室は女武将だ。


そう思うことにしよう。


「茶々、また、留守を頼む」


茨城城の天守最上階で眼下に広がる大都市茨城の城下を見ながら言う。


「わかっております。真琴様、皆を頼り皆に命令し、当主として苦渋の決断をする。それを肝に銘じて心折れる事なきよう」


「あぁ、わかっている。家臣にしんがりを命じて自分は逃げる。その覚悟は持ったつもりだ。まあ、蒸気機関外輪式推進装置付機帆船型鉄甲船戦艦には敵はいないがな」


と、言うと


「油断は禁物です」


と、背中をバシッと叩かれた。


「それと、側室は増やさないこと」


「う、う、う、うん」


自信がないので曖昧な返事を返した。


異国の美少女と恋仲になれば、増やしたい。


黒膚の美少女・白い膚の金髪碧眼美少女、ここまで側室がいるなら最早目指すはハーレム王だ。


そんな心を読んでか、茶々は強い眼力で睨みつけてきたが、見ないことにした。


背中には嫌な汗が流れたが誤魔化す。


1600年5月5日


450兵×5隻の新黒坂水軍艦隊は鹿島港から一路、オーストラリア大陸へ向けて出撃をした。


黒い煙をモクモクと上げて進む。


季節風や波を物ともせずに大海原を走り出す。


力強く確実に水面を水車で噛むようにして、バシャンバシャンと音を立てて進む。


イスパニアとの決着を着けるために。

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