第437話 ひさびさ常陸
1599年4月4日
俺は高速輸送連絡船で常陸の鹿島港に帰国した。
約3年目にして帰国だった。
はなばなしい帰国ではなく、静かな帰国。
帰国には領民たちは歓迎してくれる。
それに応えて手を振るが顔は笑えなく表情は固まったまま。
鹿島港から、鹿島神宮に移り参拝する。
帰国の挨拶と亡くした兵士たちの葬儀をここで正式に行う。
帰国に同行した側室たちや兵士達も参列した葬儀、肉体がなく申し訳ない。
ここでまたしても悔し涙を流す。
そんな意気消沈した姿を見せないよう家臣たちが気遣いしてくれ馬車で領民たちの目に触れにくいようにし北浦の港まで移動し、北浦からは船でそのまま茨城城に入城した。
出迎えもあったももの、皆なにがあったのかわかっているようで、茶々が
「お疲れ様でした。先ずはお風呂に入り疲れをお取りください。本日はもうすぐ季節が終わる真琴様の好物の鮟鱇のドブ汁を作りますので」
そう言ってにこやかに笑っていた。
桜が咲く露天風呂に入るが桜色ではなく灰色に感じた。
散り桜は燃えゆく、壱号船を思い出させ辛い。
いつもなら誰かしら入ってくるのだがそのような事もなく脱衣所でお初が座り待っていた。
しばらく湯に浸かりひたすら空を見つめる。
「常陸の空、常陸の空気、常陸の温泉、常陸の桜、常陸の海、常陸の山また見せてやりたかったな」
そう呟くと、それを聞いたお初が、
「みんなの魂は一緒に帰ってきてますよ。だから、今、見てると思います。真琴様は皆に身分関係なく接してきたので、慕われていましたからね、これからは皆は守神になりますよ」
と、そう言ってまた沈黙した。
風呂を出ると食卓の長い囲炉裏には茶々達と子供達が全員座って静かに待っていた。
大きくなった子供達も空気を読むのか静かで話しかけてこない。
杯を手にすると茶々の酒を注いだ。
「皆、留守御苦労、今日は兵達を忍び通夜だと思ってくれ、俺の愚策に散った皆の為に、献杯」
そう言って杯を飲み干した。
食べなきゃ心配させてしまう。
無理無理食べて、飲みそして酔いつぶれて寝た。
美味しいはずの鮟鱇の味さえも感じられず、酒を水のように飲み寝た。
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