第435話 父の心

 引きこもり生活一週間が過ぎた。


駄目だとはわかっているがどうにも体が動かず、闇の心が支配しているようだった。


食事は代わる代わるお初達が運んできては、部屋の外で交代で俺を監視していた。


お初に蹴られたくないから食べると自分に言い聞かせる。


でないと、食欲がある自分がなんか情けなかった。


お初はお初で俺に食べさせる理由をあたえてくれている気がする。


ドンドンドンといつもと違う足の音が聞こえた。


「伯父上様待ってください」


と、部屋の外から声が聞こえた。


「入る」


そう聞こえたのは織田信長の声だ。


「待ってください。真琴様はこの一週間風呂にも入らずただただ飯を食べ自問自答の日々を過ごしていました。身支度を調えさせますからしばらくお待ちください」


と、お初が必死になって止めているのがわかった。


「なら、船で待つ、必ず連れてこい」


と、言って織田信長の足音は遠ざかっていった。


「入ります。聞いていましたよね?湯を浴びその髭を剃り服を着替えてください」


「会わなければなにも進めないか。会うか」


切腹を言い渡される方が気が楽だ。


兵士達の後に続ける。


そう考えながら風呂に入る。


お初とお江がワシワシと頭を後ろから洗い、この一週間の垢を落とすかのごとくヘチマで体を擦られ洗われた。


黙々と洗われる俺に沈黙の時間は果てしなく感じた。


全身の皮が剥がされていくのではないかなどと考えてしまうほど、実際には15分程度洗われただけなのに。


最後にお初が、綺麗に髭を剃ってくれ、


「真琴様が思っているような沙汰は出ないと思いますよ」


と、言って最後に俺の金玉をギュッと握り、


「さあ、お行きなさい」


と、言って俺を立たせた。


重い体を引きずるようにしながら織田信長の待つKING Of ZIPANGUⅢ号に乗船し、艦橋の一室に向かった。

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