第434話 意気消沈
コロン港城に俺は無理やり連れて帰された。
船の中で悲しみと悔しさと自分の不甲斐なさに涙を流しているとお初は黙って抱きしめ頭を撫でてくれていた。
「真琴様は今まで良くやってきたわよ。死んだ家臣たちも真琴様の理想国家を作るためならと盾になったのよ」
その慰めの言葉は俺の耳を左から右へと通過していく。
何も耳には入ってこない。
ただただ自分が許せない。
痛みつけようとする行動もお初に強く抱きしめられできないでいた。
次の日には、船からコロン港城に入城した。
お江は空気を読んでいて何も言ってこなく、無邪気を装いながら抱き付いてくるいつもの首締めもなかった。
それはそれで俺には心が痛く、自室に走り込み膝を抱え部屋の隅でうずくまり泣く。
部屋の外には誰かしらはいる気配がした。
恐らく切腹でもしないか気にしているのだろうが、俺はそこまで武士になりきれていない。
灯りも着けずに暗くなる室内。
「おにぎりをここに置いておきます。良いですか、必ず朝までには食べてください。食べなかったら蹴っ飛ばします」
と、お初の出て行く。
部屋には握りたてのおむすびのご飯の匂いと、味噌汁の匂いが立ち込めた。
グーと、おなかは鳴る。
悔しい、こんな時にでも腹は鳴るか。
俺は生き残り家臣は死んだ。
壱番船に乗っていた兵達の顔を思い出す。
元々は前田慶次、真田幸村、柳生宗矩の家臣だった中から選りすぐられた兵達は長い付き合いだった。
一人一人名前を思い出しながらまた涙をする。
気が付けば朝日が窓から俺を『お前は戦犯だ』と、責めるかのように差してくる。
「眩しい・・・・・・」
その日差しを背中にしながら部屋に入ってきたお初は、
「食べなかったのね、えいっ」
と、俺の抱える太ももに蹴りをしてきたが、蹴りをするお初は泣いていた。
「朝が怖かったのよ。静かな夜更けに首でも切っているんじゃないか?って何度も何度も思ったけど、確認出来ない自分が嫌い。良いですか、これは朝ご飯、昼までには必ず食べてくださいね。でなかったらまた、蹴ります」
そう言って出て行く。
不器用だけど俺を愛してくれるお初は、あそこまで泣けるのか、俺死んだらもっと泣くんだろうな。
そう思うと辛くなり、お初が運んできて涙を垂らしていたおにぎりを口に運んだ。
くそっなんだよ、なんなんだよ、美味いじゃねえかよ。
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