第424話 左甚五郎とお江
インカ帝国復興のために皇帝ファナ・ピルコワコに協力しながら執務をこなしている。
いろいろややこしくなってきたので、俺のインカ帝国での地位は『インカ帝国執政』となり、真田幸村、伊達政宗、真壁氏幹は『インカ帝国皇帝補佐官』、お初は『インカ帝国皇帝執政代理』と定め仕事をしている。
桜子は『孤児院運営長』となり、流行病やイスパニア帝国の襲撃などで親を亡くした子を集めアルパカ牧場を運営し反物を作り、小滝は『流行病防衛長』をし漢方の知識を活用し、ラララは『語学教育長』となり日本語を教えるように働いている。
もちろん、インカ人の優秀な者には役職を与え働いて貰っている。
妊娠しているファナ・ピルコワコはクスコ陥落後もグアヤキル城での政務に励んでいる。
そんな中、日本から待望の左甚五郎が来たと思ったら、お江も一緒に来た。
「マコ~久しぶり~」
と、お江はいつものごとく首に抱きついてくる当たりは変わらず可愛い。
「良く来たと言いたいがなぜに来たの?」
「え~だって、マコが左甚五郎を呼び寄せるって事はまた可愛い彫刻彫らせるんでしょ?」
と、言うお江。
お初が警戒の眼差しを俺に送ってきた。
「あ~うん、あとにはやるつもりだが今は大工衆でドーム型住居の建設指導を頼みたい。グアヤキル城でも幾万人が集まるかわからなくなってきたから工期が短く頑丈な住居を建てなければならないからな。それと、作らねばならない物があるからな」
「そっか、大変なんだね。ねえねえ、あの綺麗な女性のお腹の子はマコの子でしょ?」
当たり前のごとく俺には新しい側室がいる事を前提で話す、お江。
「ああ、紹介する。インカ帝国皇帝ファナ・ピルコワコだ。ファナ、この娘は俺の側室でお初の妹だ、よろしく頼む」
「先輩と言うやつですね?」
と、俺が教える日本語を良く覚えてくれるファナは優しく微笑み、
「よろしくお願いします。ファナ・ピルコワコです」
と、挨拶するファナにお江は優しくお腹を触り、
「仲良くしようね、ファナちゃん」
と、ケラケラと笑っていた。
お江なら心配ない。
側室の中でコミュ力が一番高く計算高いのはお江だ。
「殿様、あっしは何を作ればよろしいので?」
と、左甚五郎。
「巨大な物を運ぶための台車を作ってもらいたい」
「巨大な物?」
「船を載せる台車だ。だから頑丈でなくてはならない。しかも、大切な船を任せるからには信頼出来る左甚五郎ではないと任せられないから呼んだ」
「はあ?船を運ぶ?」
「ああ、そうだ。船を太平洋から大西洋に移動させる」
壁に貼ってある地図を見ながら説明すると、流石の左甚五郎も驚いていた。
パナマ運河がなければ陸上を運べば良い。
平成時代に見た、茨城県北茨城市大津町の国指定無形文化財のお祭り、丸太の上を綱で引っ張り、陸上で船を走らせるお祭り『御船祭り』をイメージした。
流石に丸太の上とはいかないので、大量の車が付いた巨大な台車を用意しそれに載せ人力で引っ張り太平洋から大西洋に船を移動させる。
その台車を任せられるのは左甚五郎しかいない。
俺の大切な船、艦隊、Champion of the sea HITACHI号達を運ぶ大事業だ。
南アメリカ大陸南下して大西洋に出ることは、逆をやっていないイスパニア帝国を見ればよほどの難所だと想定出来る。
なら、陸地を運ばせるほうが確実と思った。
そして、突如大西洋に、カリブ海に現れる俺の艦隊のインパクトは絶大なはずだ。
道はすでに完成間近、あとは台車だけだ。
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