第418話 宗教対立
場所を俺の執務室に変えて二人で世界地図を見ながら話す。
「しばらくはこっちでインカ帝国・アスティカ帝国の復権に力を入れようかと。イスパニアが今、支配したいのは間違いなくこの大陸、そこを旧勢力に力を貸してひきつけながら打撃を与える。その間にマダガスカル島の整備と出来ればアフリカ大陸最南端を抑えたいんですよね」
「そうか、儂と手を結びたいと申し出る国が出て来た」
「あ~やっぱり、出来れば放置して欲しいですね。そこを巻き込むと宗教対立の構図に手を出す事になって未来永劫争うことになると思うので」
「また宗教か、ばかばかしい」
「はい、ばかばかしいですが俺も一応、神のお力を借りてますからね。そう言わないで下さい」
俺は陰陽師、特に鹿島神宮の神のお力を借りている。
「ふっ、織田家も元々は神職の家系だからな」
と、信長も実は神社に関係が深い。
「今回信長様に日本に残って貰ったのは、俺が知る世界の支配構図が完全に変わったからなんです。だから、不測の事態に備えて日本で指揮をとってほしかった訳なんですよ。接触してきた国はオスマントルコ帝国ですよね?」
「そうだ」
キリスト教とイスラム教の戦いのどちらかに手を貸す構図は避けたい。
今、日本が宗教対立に肩入れすれば間違いなくその肩入れしたほうが勝つ。
それだけの力があるのはわかっている。
アメリカ大陸やオーストラリアは自然神を崇めていて大勢力と言うわけではなく、どちらかと言えば弱者。
それを強者である日本が守り、友好関係を結ぶのが理想的だと考えている。
「幸せを祈り、助けを求め、日々健やかに暮らす事、死んだときに極楽やら天国に逝くために祈る対象が争いの種になる。皮肉なものよな」
と、信長はしみじみと言った。
「しかも、その宗教対立の根幹になるキリスト教、イスラム教、ユダヤ教って大元は同じ神を信じる宗教ですからね。それが争うことになって俺の時代にまで続くんですよ。それも世界を滅ぼすような兵器まで作って、笑うに笑えないですよね」
「常陸はその未来を回避する為に儂に世界の覇者になれと言うわけなのだな」
「はい、俺が日本史史上一番尊敬しているのはあなた様ですからね。宗教と政治を分断させたのは信長様の比叡山焼き討ちに一向一揆に容赦ない攻めをしたのが大きな影響を与えたと考えていますから。日本はなんだかんだ言って宗教対立がない国になるのですから珍しいんですよ」
「前にも聞いたな。で、どうする?」
「取り敢えずは、高山右近とイスパニア帝国フィリッペ二世の首ですよね。信雄殿の無念を晴らすために。そして、ローマ教皇が指示したかどうかの真意を確かめてたから、考える事になるかと」
「そうだな、儂は日本でじっくり動かずにいるか」
「はい、そう願います」
今後の道筋を改めて信長と話し合っていると、廊下を走る足音の後に扉の前で、
「入ります」
と、お初の声がしてドアが開く。
「大軍が攻めてきました」
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