第417話 織田信長とココア

 織田信長はじっと日本国で待つことが出来ず五隻の戦艦を率いて、確立された高速輸送連絡船航路を使いエクアドルに視察と称して来ていた。


「息災で何よりだ」


と言う気を使ってくれる言葉が嬉しかった。


そんな信長にインカ帝国皇帝ファナ・ピルコワコを紹介すると、


「抱いたのか?」


なんか久々にトルネードなド直球のタマが投げられてきた。


「はい、側室です」


あきれた顔をしながら、


「ほどほどにせい」


と、怒られてしまった。


城塞都市として整備されているグアヤキル城を視察しては石加工技術に感心していた。


「常陸、石工職人を雇いたい。交渉してくれ」


「はい、一応希望者を募りますね」


俺はファナ・ピルコワコに言うとすぐに10人が集まる。


皇帝権限の強制指名でない事を確認して日本移住の為に言葉、文化を教える事になる。


どうやら俺が育った日本に興味がある若者たちらしく、素直に嬉しい。


休息に織田信長に漆黒の茶をファナ・ピルコワコが出す。


皇帝と言えども俺の側室なファナ・ピルコワコはココアを煎れるくらいはする。


始めてみる黒い液体に流石の信長も顰めっ面でその茶を見ている。


俺も同じ物がテーブルに置かれるので先に飲んでみせる。


隣でお初はホットミルクって合わせて飲んでみせる。


「伯父上様、慣れると大変美味でございます。体にも良いらしいですよ」


と、お初が勧める。


「これはカカオ豆をつかったお茶です。抗酸化作用やら血液サラサラやら頭に良いとか色々な効能があって平成なら誰もが毎日のごとく口にしているんですよ」


「そうか、ならいただこう」


と、信長は一口飲む。


その姿は、違いのわかる男と言わんばかりに一度目を閉じ鼻から息をすーっと吐き出し


「うむ、このなんとも不思議な香りがよいな。悪くはない」


と、ゆっくり飲み干していた。


抹茶を好む信長にとっては苦味もまた旨味なのだ。


「苦味が苦手な人はお初みたいに牛乳と合わせて飲んだりするんですよ」


「儂はこの苦味も好きだがな」


と、もういっぱいと萌陶器をファナ・ピルコワコに渡してそれをまた飲み終えると、カカオ豆の粉が気になるらしく小姓に野点の準備をさせ、カカオ豆の粉を茶碗に温めた牛乳を少しいれ、茶筅で溶き始めた。


織田信長とココアと牛乳の融合。


平成で各地を支配するコーヒー屋が、毎日レジカウンターでナントカラトフラペチーノとか言う魔法の名前のような飲み物にソックリに泡がふっくらした飲み物を作ってしまう織田信長。


俺はそれを飲むと、


「クリーミーそしてなんでこんなに香り高く美味くなるんだ?信長様、美味いです」


「そうか、美味いか」


と、俺が「美味い」と素直に言うのが好きらしい信長は少しニヤリとしていた。


「茶を飲みに来たわけではないぞ、これからどうするつもりだ?」


と、真面目な顔に変わっていた。

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