第407話 修羅の道

プナ島砦防衛戦で真壁氏幹が捕まえたイスパニア兵士を尋問する。


情報を聞かなくてはならない。


予想より多くのイスパニア兵士が攻めてきたことから近くに拠点があるはずだ。


が、残念だ。


優しく尋問したのに話さないとは、本当に残念だ。


「佐助、忍びのやり方で聞き出してくれ」


真田幸村配下の忍びの佐助に任せる。


プナ島砦の馬小屋から凄惨な悲鳴が続く。


拷問だ。


イスパニア兵士がインカ帝国の民にしたことを考えればいかしかたない。


「真琴様、駄目、鬼になりかけている」


と、お初が言う。


「怖いか、俺は己の正義を貫くために修羅になると決めた。だからこそ、イスパニア相手には修羅を突き通す。イスパニアもまた修羅を突き通してきたのだ、こちら側も修羅で行かなければ戦えない」


いつになく真剣に言ってくるお初に対して俺の決意を言う。


「駄目、不動明王の如き優しいお心を忘れないで下さい。時に強く時に情けなく時に優しい真琴様が消えるのは嫌、鬼になってはいけない」


と、お初が涙を流し俺の背中に抱きついてきた。


修羅の道、そうか、俺は鬼になりかけているのか。


自らの道を進むとき修羅の道は致し方ないと思っていたが、鬼か。


織田信長が大六天魔王を名乗ったのは自らが鬼への道をも選ばんとする思いだったのかも知れないな。


お初に教えられた気分だった。


戦いになれ、人殺しに慣れてしまったせいか。


お市様に「人殺しに慣れるな」って最初に言われたっけな。


慣れとは怖い物だ。


しばらく一人で気分を落ち着かせるために、砦に作られた自室で禅を組んだ。


3日間、自分自身を落ち着かせる為にひたすら禅を組んだ。


4日目の朝、外は清々しい日差しの中自身を出るとお初が待っていた。


「お初、ありがとう。このまま行けば明智光秀や南光坊天海のように俺の心に妖魔が住み着いたかもしれないな。お初に助けられた。ありがとう」


「側室として当然の事をしてあげただけなんだからね」


ひさびさのお初節を聞いた気がする。


このまま修羅を突き通し己が鬼となっていたならば、必ずしや俺の黒き心に妖魔が入り込んでいただろう。


倒さねばならぬ相手に支配される所だった。


気をつけねば。

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