第391話 じゃんがら念仏踊りの朝
1596年8月16日
お盆が開けの常陸の行事、精霊流しに当たる御船流しが各地の港で行われる。
それと同じくして港でじゃんがら念仏踊り。
御船流しと、じゃんがら念仏踊りは常陸北部地域から磐城地域で盛んな行事だが、俺が奨励して常陸国内で盛んになっていた。
そのじゃんがら念仏踊りを最後に、お盆の行事を終えた鹿島城港は出撃の準備を万全に整え、あとは俺が乗船し出航の合図をするだけだった。
桟橋のたもとで茶々達留守番組に挨拶をする。
「ん?茶々暑くないのか?袿?」
茶々は夏だと言うのに着物を多く着ているように見えた。
「軽い夏風邪だと思います。少し寒気が」
と、だけ言った。
「大事にしてくれ、風邪は万病の元だからな」
「真琴様こそお身体をご自愛ください。小滝、真琴様の健康管理頼みましたよ」
「はい、ありとあらゆる物を掛け合わせた特製漢方薬を調合致しましたから」
何やら不安のあるキーワードが出て俺の背中に悪寒が走った。
また、なんかの金玉入り?なんだ?怖いんだけど。
不味いのはやめてほしい。
「では、今回は長旅になりそうだ、あとの事は任せた。皆を常陸国を頼んだぞ、武丸、動物達も大切だが自らを高めるため剣はしっかり学べ」
「はい、父上様、父上様が帰ってきたら手合わせ願います」
「よし、約束しよう、稽古を付けてやる」
そう言って俺はChampion of the sea HITACHI号に乗船する。
大太鼓に法螺貝がけたたましくなると合図。
すると、今か今かと待っていた船は錨を上げて帆を張った。
「いざ、出陣!」
俺は軍配を高々に上げ振り下ろし出航の合図をすると、Champion of the sea HITACHI号の大砲から空砲が二発撃たれた。
ドンドン
動き出す船、俺は後ろを振り向かない。
愛する常陸国、また目にするときは帰国の時、そう決めたからだ。
お初や小滝、ラララは大きく手を振っていた。
陸地が見えなくなるまで。
「お初、茶々の風邪は大丈夫なのか?」
少し気になり聞いてみる。
「真琴様の鈍感、袿でお腹を隠していたのですよ」
「んん?太った?」
「鈍感も通り過ぎると呆れるわね、妊娠しているのよ、二人目。出陣する真琴様の心を乱さぬようにする為に隠していたのよ。10月には生まれる予定よ」
ゆっくり2人で袋田温泉で過ごした時に出来たのか。
確かに、茶々の妊娠となり産み月が近いとなれば心が乱れ、任せて良いのか?と、思ってしまうかもしれない。
そんな俺に気を使うできた嫁、茶々。
ありがとう。
俺は俺が求める大義の為、その心を無駄にしないよう頑張るよ。
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