第380話 蒟蒻の聖地は茨城

 三泊、袋田温泉で短い休暇をとり茨城城に帰る道で昼に一件の茶屋に寄る。


店主の老夫婦は地面に頭を付けて畏まるが、やめてほしい。


まだ、会釈だけで十分だと言うのは浸透していない。


自分が右大臣であり、常陸国の国主なのは理解しているが、どうしても慣れないもの。


そんな老夫婦にお茶と食い物を頼むと、


「みすぼらしい食べ物ですみません」


と、謝りながら味噌で煮た蒟蒻の串刺しを出してきた。


「いやいや、温かい料理は有り難いよ、うちの家臣たちにも頼むね。ちゃんとお代は払うから」


「とんでもねぇえこって、御領主様からお代は」


と、言うが財布を持つ茶々はにこやかに払って


「美味しい蒟蒻ありがとう」


と、食べている。


「蒟蒻って、真琴様の時代にもあるのですか?」


「え?普通にあるよ。日本料理の代表的食材で世界的にも有名だし、健康を気にする人は喜んで食べてるよ。俺は酢味噌で食べる刺身こんにゃく好きだし」


「え?世界的に?この作るのが大変な蒟蒻ですか?」


「あ~作り置きが出来ないんだっけ?」


「はい、城でも食べるときは芋をすりおろしてその都度作ってますよ」


「ん?蒟蒻って、薄く切って冬場に乾燥させて粉にする製法があるんだけど、ん?あっ!確か小学校の郷土史で習ったけど今から200年くらいあとの話しだな、確か水戸藩の那珂郡の中島藤右衛門が製法を確立して水戸藩の専売品になったんだよ」


「あら、それは良い作り方ではないですか、すぐに広めましょう」


蒟蒻と言えば群馬県って、言われるようになるが実は製法を確立して食べやすくしたのは茨城県民の祖先だ。


江戸時代なら蒟蒻なら水戸藩の代表的産物。


今まで忘れていたが、郷土史で習った物が今役にたつとは。


平成時代、袋田のお土産と言えば刺身こんにゃくだったな、忘れていた。


このあと茨城城に戻り料理方をまとめてる桃子、梅子に頼んで女子校の生徒たちに作らせると新たな産業になった。


蒟蒻の聖地は茨城だ。


蒟蒻、製法を確立した人も蒟蒻が兵器として茨城の海岸からアメリカに飛ばす事に使われるなど考えてもいなかっただろうな。


太平洋戦争で風船爆弾に塗るなんて発想した人も凄いな。

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