第377話 幸村帰城
少し遅れもうすこしで年越しになる年の瀬に真田幸村は帰ってきた。
初めて鉄朱塗絡繰美少女栄茨万華里温門の門をくぐる幸村は笑いをこらえている様子。
「ただいま帰りました」
「お疲れ様、樺太のほうはどうだ?」
「はい、農政改革に住居改革は順調その物、ただ・・・・・・」
何か話しにくそう。
「ん、俺の部屋で話しを聞こう」
と、一度風呂で旅の疲れを落とした幸村が執務をしていた俺の天守に部屋に来た。
「話しとは?トゥルックか?オリオンの事か?」
側室のトゥルックか、次男のオリオンに何かあったのかと心配になる。
「お二方はとても健やかにお過ごしです。実は、北条氏規様の嫡男がお亡くなりになりまして、氏規様も病弱で跡継ぎに悩んでおられ、氏規様には宜しければ御大将と鶴美の方様の子、須久那丸様を養子に頂けないかとな申し出が」
鶴美は北条氏規の娘、須久那丸は北条氏規の孫になる。
「そうか、あいわかった。了承しよう。お世継ぎ問題で樺太が荒れる事は好ましくない好ましくないから、世継ぎの心配はないように伝えよ。ただ、樺太に向かわせるのは体が出来る五歳を過ぎた頃を目安とする、そう伝え氏規には体を治すことに専念させよ」
「次の渡航時に、養子のことお伝えいたします」
「すまぬな、厳しい寒い地を担当させてしまって」
「ははは、大丈夫ですよ。何、生まれ育った真田の里は雪深く寒い土地ですから慣れてますよ」
と、幸村はなんの苦労もないよ。と、言いたげに笑っていた。
「幸村、幸村も体壊さぬよう、春までは休息を申し付ける」
「は、はい。わかりました」
大事な幸村に体を壊させるわけにはいかないゆっくり休んで貰おう。
幸村は兄が統治する下野で湯治をしながら過ごすと言う。
湯治、羨ましいな。
鶴美に氏規が具合が悪いようだと伝えるのは控えた。
冬の間には樺太行きは出来ないのだから心配をかけさせるだけだと思ったからだ。
ただ、須久那丸を北条に養子に出すことは伝えた。
鶴美も
「弟が亡くなったなら是非とも北条を残すためにお願いします」
と、言ってきた。
「あぁ、幕府に忠誠を誓った北条を潰すような事はさせないよ」
幕府には事の次第を力丸から伝えてもらい、もし氏規が亡くなっても須久那丸が跡継ぎとして樺太を任せると言う承諾を貰った。
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