第363話 巨城キンボルトン城(オーストラリア開発編2)

 キンボルトン城が巨城なのは勿論、守りの要として作ってあるのだが、南蛮船からの守備の為だけに無駄に何周も廓が存在しているわけではなかった。


城の外に散策に行こうとすると、


「御大将、甲冑を着てしっかりと武装した兵を連れて行ってください」


と、宗矩に止められた。


「えっ?甲冑?だって、周りのアボリジニは仲間なんでしょ?必要なくない?」


「ここはワニがたくさんいます。ワニに食べられた足軽も3人ほど」


ロビンソン川とメダ川に挟まれた地、さらに意外かもしれないが海にもワニが泳いでいる。


「なるほど、ワニ対策でこんなに壁を多く作っているわけね」


「はい、ワニと毒蛇対策にございます」


「俺は敵の侵入を阻むのに迷路でも作っているのかと思ったよ」


「それもなくはないのですが、ここの大地の生き物たちはなかなか強敵ぞろい、人間の背丈ほどある鳥にも出くわすことも」


「あーエミューとか言うと鳥か?」


「御大将がそう呼ぶならその名で呼びましょう、奇妙な鳥は多く、人の言葉を真似する鳥までいるのですから不思議な土地でございます」


「オウムの種類かな?あっ、鳥と言えばドードーって鳥いないかな?」


「御大将が名前を知っていても、我々は初めて見る物ばかり名などわかりません」


「だよね~そうだったよね。俺の感覚で名所言ってもわからないんだよね」


と、そんな会話をしていると、ワラビーが城の庭をお初と桜子に追いかけられながら逃げ回っていた。


ワラビーは可愛いから食べないで飼うとお初は言っているが、桜子は包丁を構えて追いかけている。


ん~、ワラビーは今夜の夕飯になるのかな。


お初と桜子にはもはや出身身分の差などはない、同等の俺の家族だ。


どちらの意見が通るのかは、今夜の夕飯のみそ汁の具でわかりそうだ。


出来るならペットになって欲しいが、みそ汁になっていた。


キンボルトン城の天守は三ヶ月で形となった。


宗矩のこだわりらしく、望楼型の日本古式建築の五階六層の天守。


壁や屋根も木板だが、日本でよく見る城って感じの天守だ。


久々に日本を感じさせる城。


うん、他の城も天守だけは他もドーム型にしないでおくか。


キンボルトン城はケアンズ城とは毛色が違う城となっていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る