第338話 ケアンズ城
オーストラリア大陸の東海岸にある平成時代線での名・ケアンズ、そこの湾の中にあるアドミラルティ島。
ここに俺はオーストラリア最初の拠点、ケアンズ城を建て始めた。
周囲は川で自然の水堀、そこに木を組み上げてログハウス工法で急ピッチに作り上げる。
木は勿論、乾燥などが必要なのだが、今は兵たちが雨風を凌げる場所作りのほうが優先課題。
建物の良しあしは残念ながら二の次だ。
飾りっ気もないログハウス。
左甚五郎を連れてきていれば、萌な彫刻入りログハウスが出来るのだろうが仕方がない。
兵たちだけで作り上げなければならないのだから贅沢は言ってはいられない。
そして重要なのは食料の調達。
兵達にはカンガルーと鳥とワニ、魚の採取は許可した。
お初が抱いているコアラ、
「これも食べるのですか?」
と、ウルウルした目でまるで、お気に入りのぬいぐるみが親に汚いからと捨てられそうになるような子の目で訴えかけてきていた。
「あっ、そいつ確かユーカリの毒を体内に持っているとかなんとかで食べるのは不適合だったはずだから食べないよ、前に来た時に食べた記憶ないし」
と言うと、
「真琴様、私だから良いのですが他に聞かれないように注意してくださいね」
と、理不尽に怒られてしまった。
未来から来ているのは知っているのは極々限られた者だけなのだ。
陣を張って二週間、丸太で柵も完成したので桜子と梅子の下船も許可すると、
「さてはて、なにを捌きますか?腕が鳴ります」
と、なぜか二人は燃えていた。
狭い船内で揚げ膳据え膳の生活だったのが飽き飽きしていたとのこと、その日の夕飯の支度はちょいと見てはいられなかった。
二人して兵が捕らえてきたカンガルーの皮を剥いで肉を切り分けていく・・・・・・。
ワイルドだろー?俺の側室・・・・・・。
勿論食べるが、なんか悲しい。
おじさんのように地面に横たわっているカンガルーは親近感があるせいだろうか。
カンガルーの肉は味噌が塗られ串刺しで焼き肉になる。
味は、肉に臭みは海獣よりは少なく嫌な脂分もないそして筋肉質だからとやたらに硬いわけでもない大変食べやすい肉だ。
平成時代でもオーストラリアの一般的で食べられているし、旅行で来た時にも食べている。
トドだのオットセイだのよりは美味い。
ブランブランした玉をどうにか出来ないだろうかと、二人は悩んでいたので何かに加工される前に処分を命じた。
小糸と小滝だったら燻製にして漢方薬だって精力剤にされそうで怖い。
ワニも皮が硬いと言いながらも尻の穴から包丁を入れる二人、料理は任せておこう。
そんなワイルドな生活をして二か月、ケアンズ城はだいたいの完成を遂げた。
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