第339話 飲みにケーション

 ケアンズ城の完成後、川を渡った場所、城建築で木々を切り倒したところを畑にしている作業を始める中人影がちらほら見えるようになる。


食料調達に行っている兵達からも、現地住民アボリジニが近くまで来ているのを見かけたと言う。


現在相手側も様子を伺っているのだろう。


そんな中、小競り合いが発生したらしく、木でできた武器を投げてきたが叩き落したと言う佐々木小次郎。


相手が投げてきたブーメランが手にされていた。


「御大将、統治するならやはり少しは戦をして強さを見せつけなければ」


「コミュニケーションが取れれば良いのだけど言葉わからいしね・・・・・・こういう時は酒と美味い物を送るか、お初酒とつまみを用意させてくれ、小次郎は開けた場所に机と椅子を並べてれ、よくよく周りから見える場所が良い」


「はい、すぐに手配いたします」


そう言って数日、草木が刈り取られた草原に机と椅子が用意される。


そこに桜子と梅子が作った重箱弁当に入れられた、何の鳥だかわからないが唐揚げとカンガルーのフライ、魚介類の佃煮、などを入れ、酒を持ち一人行こうとすると、


「私も行くわよ」


と、お初がつい行くと言う。


和式愛闇幡型甲冑を着て二人でその草原の真ん中の椅子に座る。


そして仮面を上げ二人で酒を飲みだす。


「ははは、こんなところで飲むのも面白いだろ」


「えぇ、面白いですね。盃がこれでなければさらに良いのですが、で、何をお考えなのですか?」


「まぁ、何も考えるな、今日はほどほどで帰る予定だが、人影を感じても気が付かないふりをしていてくれ」


そう言って二人で何事もなく二時間そこでピクニック気分で酒盛りをしたのち城に戻った。


これを四日ほど続けると、


「真琴様、今日は近づいてきますよ」


「だな、気が付かないふり気が付かないふり」


「無理です、五人一気に走ってきますよ」


アボリジニと思われる五人が走り寄ってきた。


手には木が削られて石の刃がつけられた槍を持つ者と、ブーメランを持つ者が俺の前に立つ。


俺は静かに盃・・・・・・お初が嫌がる当家自慢の萌え萌えな美少女が描かれた陶器の盃に酒を人数分注いで、机に並べた。


俺は静かにまた飲み、お初はいつでも抜刀できるように刀に手を添えている。


アボリジニ、


「#$"%&'()'&')###$%&!"#$%&'(」


と、わけのわからない言葉を言ってくる。


俺は酒を入れた盃を指さし飲めと言う身振り手振りで表現する。


一人の若そうな男が、机に近づき仲間が止めようとしている中、盃を手にして口に運んだ。


「くわほーーーーーーー#$$"!%$'('&%$#」


アボリジニは酒の文化がないと聞いているので初めてのアルコール、食道をじりじりと通る物は初めての体験のはず。


そして、萌美少女陶器をがっつりと見ている。


そうだ、二次元美少女は言葉の壁、文化の壁を破壊する興味深い絵なはずなのだ。


「あげるよ」


と通じるはずもないが、身振り手振りで表現する。


他の四人も恐る恐る酒を口に運んだ。


俺はその盃に酒をまた注ぐ、


「さあ飲め、食べてれ」


串がさしてある料理を食べて安全なのを見せつける。


一人が恐る恐る食べると、なにやら喜んでいる様子。


「ふふふっ、胃袋の紐はつかませてもらったぞ」


「真琴様?」


その日用意した料理と酒がなくなると、五人は酔いつぶれ倒れていた。


俺は五人分の萌美少女盃を残したまま城に帰った。


「真琴様、あれで仲良くなれるのですか?」


「さあ、どう出るかだな、酔いを心地よいと思うか毒と思うかはあの五人かかっているが、あの萌美少女盃には敵対の意思がないことを表現しているつもりの物なのだがどうでるかだな」


盃に描かれた萌えな美少女は踊り踊っている絵が書かれ大変楽し気な物だ。


それを気に入ってくれさえすれば・・・・・・。


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