第331話 小笠原諸島
パプアニューギニア島を目指す俺は琉球ではなく、小笠原諸島を目指す。
琉球から東南アジアを通るルートは避けたい。
それは南蛮船とのいらぬ遭遇を避け、争いを避けたいからだ。
実は信長も琉球までは行くがそのあと東南アジアルートではなく、小笠原諸島を目指すルートを使う。
南蛮とはあくまでも輸入輸出の関係を保つため争いは避けている。
もちろん、日本が持つ南蛮式鉄甲船は最先端技術の戦艦、戦えば勝のは楽勝だが、その後の交易が廃れてしまえば元も子もない。
だからこそ、敢えて東南アジアルートは避ける。
樺太に行くように日本列島沿いではない初めての航海は、織田信長の家臣の乗組員に任せる。
俺は黙って船室で横になる。
単純に気持ちが悪い、船酔いだ。
遠洋の揺れは激しく俺に容赦なく吐き気を与え続ける。
それを優しく介抱してくれるのが意外にも、お初。
俺が桶に吐いた物も嫌な顔をせず片付け、俺の口元を優しく濡れた手縫いで拭いてくれる。
「大丈夫ですか?水飲めますか?お粥だけでも食べてください。お粥が
駄目なら味噌の解いた汁だけでも、桜子、味噌を熱湯で解いた物を作ってあげて」
と、指示を出しながら俺の介抱をしてくれる。
5日程酷い船酔いに悩まされたが、ようやく慣れ、お粥と梅干しと味噌汁は食べられるようになる。
「すまぬな、お初」
「今更なにを言いますか?私は真琴様の側室筆頭、当たり前の事ですよ。それに命を助けていただいた恩は一生涯かかっても返せませんからね」
今でもあの安土城での敵襲来の時を覚えてくれているお初、ツンデレだ。
膝枕を頼むと。
「甘えるな」
と、言いながらもしてくれた。
6日目の夕刻、父島に作られた海城に入港する。
もちろん、織田信長直轄の海城だ。
その海城は溶岩を切り組み上げられた石造りの城塞、大砲が無数に見えるが俺の家紋の旗を高々とあげながら近づく。
「空砲、放て」
敵対的行動がないことを示すため大砲に弾が入って無いことを示すために空砲を放つ。
すると、父島の城塞の大砲も空砲が撃たれた。
その後、父島城塞に入港する。
「名を申されよ」
と、父島城塞から大声が叫ばれると、宗矩が
「右大臣黒坂常陸守真琴家臣、柳生右近衛将監宗矩である。当主自らお乗りの船、接岸の許可を求める」
「許可する」
と、大声でやり取りをする。
港に入港し宗矩が降りたあと俺も降りると、
「失礼いたしました。もし、黒坂様がおいでになるような事あらば歓迎せよと、上様から申し使っております」
「で、あるか。信長様に会いに行く船旅、補給と休息がいたしたい」
「はっ、ただちに手配させていただきます。本日はこちらでお休みください」
と、小さな天守に案内され、カラフルな魚の夕食を食べた。
すんなりと補給もされ、2日間滞在したのち再び太平洋に船を進めた。
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