第318話 第二弾樺太開発その7

 1591年10月末


はい、俺は使い物にならなくなるように丸まっている。


冷えから避けるために和式愛闇幡型甲冑(わしきあいあんまんがたかっちゅう)を着て丸まるとアルマジロみたいになる。


だが今回は、簡単には帰れない。


息子もいる。


「トゥルック、常陸に帰るがどうする?」


囲炉裏を挟んで俺のためにアイヌ特有の布地で縫い物をしているトゥルックに聞くと、


「母もいる 村もきになる ここにいたい」


とトゥルックは言う。


「ん~、俺は常陸にも家族いるし仕事もあるから帰るが良いか?」


「わかっていること ここ立派な家もある 食料もある オリオンは責任持って育てる」


と、トゥルックは言ってくれる。


俺は、予備の太刀とトゥルックが俺の側室であり、オリオンが俺の息子である事を書いた証文を渡す。


「何かあれば北条氏規を頼ってくれ」


「はい わかっています」


そう言うと、トゥルックは俺に半纏のような物を背中からかけて後ろから抱きついてきた。


「来年の春 またきて くれますよね?」


「もちろんだとも」


俺は振り向きトゥルックを抱きしめ直す。


隙間から覗くお初、お江、小糸、小滝が建て一列に並んで覗いてる姿勢が気になるが気づかない振りしてしばらく抱き合っていると、オリオンが泣き出した。


「パパは帰るけどまた戻って来るからなぁ」


と、俺はオリオンを抱き上げる。


するとまた眠りに入る。


「失礼します。護衛役を5名選任いたしましたので御報告を」


と、宗矩が入ってきた。


「護衛役?」


「はい、この村に住んで御大将の御子息を御守りする役にございます」


「強制ではないよな?」


「大丈夫です。村人とねんごろになった者がいましたので」


あっ!俺だけではなく家臣も恋愛していたのね。


「なら、任せるよ。常陸も気になるし帰るか」


俺は翌日、南蛮型鉄甲船に乗り込むとトゥルックは大きく手を振ってくれていた。


樺太を離れる船から見えなくなるまで俺は島をひたすら見ていた。


10日間の船旅を終え鹿島港に入港した。

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