第311話 最上義康対お初・お江

 見送りに付いてきていた最上義康が拗ねていた。


「どうした?」


「僕も行きたいのに駄目何ですか?」


と、少し上目使いに言ってくる。


最上義康、女装させたら可愛いだろう?と、言う美少年なのだ。


「もう少し経験を積んでからと思っているが」


「僕、毎日鍛錬してます。お初の方様に負けない自信あります」


と、隣に馬に乗るお初に言っていた。


「聞き捨てなりませんね。女だからと馬鹿にしますか?仮にも茨城城守衛奉行を仰せつかってる身、そこら辺の男になど負けるはずが後れをとるような事はありませ」


と、キツい目で義康を睨んでいる。


「だったら、僕と勝負して勝ったら連れて行ってください」


「これ、お初、義康やめないか」


と、俺が止めるが二人は最早戦う気満々の様子。


このまま船に乗るのも良くないと思い、


「なら、道場で竹刀での勝負だからな」


と、2人を鹿島城の大きな道場に連れて行く。


そこで、宗矩の審判で勝負をする。


勝負は一撃、お初の竹刀が義康の右腕を捉え、義康は竹刀を落としていた。


「義康、お初の方様は毎日鍛錬をしてきておる。柳生新陰流免許皆伝ぞ」


と、宗矩が言っている。


そう、俺を懲らしめるため・・・・・・ではなくて、城を守る為に日々努力をしているのがお初で、剣、薙刀、火縄銃、弓矢の腕前はどれも一流だ。


崩れ落ちる義康の肩をお江が叩き、


「私も馬鹿にされると悔しいから勝負しておく?」


「は?え?お江が竹刀?え?」


と、止めようとしたら宗矩が俺を止めた。


「御大将、大丈夫です」


若干むきになる義康は再び構えて試合が始まる。



一瞬、お江は視界から消えたと思ったら、義康の後ろから竹刀を背中に突き当てていた。


「私ね、マコの邪魔にならないようにね、佐助と宗矩の配下のくノ一に習ってたんだよ」


そう、お江は俺の後ろに回って首を絞めるマイブームは昇華され、最近だと気がつかないくらいの速さと静けさで後ろに回ってきている。


何となくは気がついていたがこれほどだったとは思わなかった。


義康はお初とお江に負けたのが悔しいのか膝から崩れ落ちていた。


「義康、腕を磨け、さすればいずれは連れて行く」


と、俺は肩を軽く叩き道場を出て南蛮型鉄甲船に乗り込んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る