第306話 耐熱煉瓦

 梅の咲き誇り出したころ、俺はまた茨城城城下の少し離れた開けた土地で耐熱煉瓦試験の見聞をしている。


今回で14回目の試験となるらしく完成が近いからという。


そんな試作のミニ反射炉からはすでに煙が黙々と出ている。


「石炭を入れろ、風をもっと送れ」


と、この反射炉製作の指揮を執っている国友重光が指示をしている。


どんどん燃え上がる石炭の熱は広い荒野を温めている。


「殿様、成功です。この熱なら鉄は溶けます。やっとできました」


耐熱煉瓦の試験はこの日、成功した。


「みんな、よく作ってくれた。これは日本にとって大きな一歩になるぞ、いや、世界のを一歩抜きに出たはずだ。すぐに本格的反射炉の建造を開始してくれ、今日は祝宴ぞ」


皆は肩を叩き合ったり抱きしめ合ったりして喜んでいた。


反射炉が完成すれば製鉄生産量は一気に上がり、武器・船の生産が増える。


安い値段で農機具だって作れる。


そうなれば、農業にだって恩恵は回っていく。


そして、生活が向上する。


産業革命への一歩がまた近くなったと俺は歓喜した。


日本から世界を変えてやるぞ。


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