第299話 太郎と次郎

 茨城城のいつも変わらぬ萌え萌えな城の門を抜けると、茶々達が左右に分かれ迎えてくれた。


「お帰りなさいませ」


と、茶々が言うと側室皆が頭を下げ出迎えた。


約4ヶ月ぶりの帰城に皆の元気な姿に安堵する。


「お江、あれほど目を光らせておきなさいと言ったのに」


と、お初が言うのは鶴美を見たからだった。


「まっ、想像していたよりは少なかったはね」


「お初、俺が何人も連れてくると思ったか?」


「だって、姉妹を側室にしまくってるのはどこのお方?」


「うっ、」


ぐうの音も出ない。


「まぁ、北条氏規殿の娘なら仕方がないわね!歓迎するけどいつまでも抱きついていないで、側室になるなら約定は守っていただきます。あなたも、鹿島神宮に神文血判を納めていただきます」


そう、うちの側室達は皆、神に側室が毎夜交代制であり抜け駆けをしないことを誓っている。


ラララとリリリも例外ではないが、誓う神は信仰心尊重してハワイの神だ。


そんな出迎えを鶴美は怯えながら俺の腕に抱きつきながら、背中に隠れようとしている。


「何も取って喰おうなどと思ってません。真琴様が迎え入れると決めたなら私達は従うだけのこと、真琴様は女性には優柔不断ですから仕方ないのです。さぁ、怖がらないで」


と、茶々が俺に蔑むような視線を送りながら言っている。


いつも以上に寒い。


そんな凍る時の時空に吸い込まれたのではと思える中、


「キャン」


「キャン」


籠から樺太犬二匹が顔を出すと場が一気に和んだ空気になったのがわかった。


「ワンワン?」


と、武丸と彩華と仁保が駆け寄って来た。


3人は抱けないので一番早かった彩華を抱き上げる。


「ちちうえさま、ワンワン」


「そうだよ、樺太の友達に貰ったんだよ、太郎と次郎だ」


「たろう?じろう?」


「そうだよ、太郎と次郎だ。樺太犬と言ったら太郎と次郎だ、誰がなんと言おうと太郎と次郎だ」


俺はあの高○健さんの名作映画で涙した。


だからこそ、犬には付けたい名前。


「マコ~船の中でも言ったけどその名前可愛くないよ~」


と、お江はなんだか気に入らないらしい。が、決めた事だ。


「ほら、武丸、彩華、仁保、これからの友達だぞ、一緒に仲良く遊ぶんだぞ」


と、言うと3人は籠にいる太郎と次郎に手を出し甘噛みをされながら困惑していた。


「友達から貰った?友達ねぇー、どうせ女なんでしょう?」


お初は鋭い。


「マコから離すの大変だったんだよ。金色の髪の毛で空色の目の色してね、肌も白く凄く綺麗な人だったよ」


「お江、チクるのやめて」


俺は側室達が睨めつけてくる視線にますます寒さを感じた。


俺の体感温度は今は茨城城は樺太より寒かった。


背筋がゾクゾクとする。


自分の城の温泉に入ってようやくその寒さから解放された。

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