第298話 帰城

 10日間の帰国の旅は順調に進み、仙台に伊達政宗を降ろして鹿島港に帰港した。


鹿島港には、織田信長の専用南蛮型鉄甲船の姿はなかったが三隻だけ残っていた。


入港すると、力丸が迎えてくれる。


「お帰りなさいませ。留守は滞りなく常陸国は何事もありませんので、旅のお疲れをお休めください」


「それは良いがこの残っている三隻はなんだ?」


「はい、上様が常陸国の守りに残していく、旧型艦だから気にするなと」


「それは、俺に三隻くれるってこと?」


「はい、兵も年齢を重ねて異国への長旅には耐えられなくなった者達を200名ほど残していくとの事で、御大将の不在時の常陸国の、いや、北の守りの要にせよと申しておりました」


と、40代後半くらいから60代前半くらいの兵士達が整列していた。


「なるほどな、また、樺太に行く予定だから海の守りが薄くなるからな、皆、家臣として雇うよろしく頼んだ」


俺が保有する南蛮型鉄甲船は六隻となった。


信長は俺があっちこっちに出向くようになるようになると考えたのだろう。


いや、そうさせようとしていたのかもしれない。


信長がいるときに北条氏規が茨城城に来たのはタイミングが良すぎると今になると思う節があった。


未来の知識を未開拓の日本の地を発展させよ。


そう信長は言いたいのだろうと推測した。


そんな事を考えていると、


「あっ、やはりまた増えてますね」


と、力丸は鶴美を見て呆れていた。


「北条氏規の娘だ、察しろ」


「御大将、初の方様に刺されない事を祈っております」


と、何も持たぬ手で刺す真似をしていた。


「止めてくれ。洒落じゃすまないから」


「ハハハッ、まあ大丈夫だとは思いますが旅のたびに増えないようにご注意ください。批判が湧きますから」


「う、うん」


と、曖昧な返事をした。


鹿島神宮に帰国の挨拶の参拝をしたのち茨城城に帰城した。


帰路の馬上から常陸の景色を見る。


1590年12月師走になり、旅たつときに青々した筑波山も紅葉の残りの葉で茶色に色変わっていた。


茨城もすっかりと冬だ。

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