第297話 樺太出港

 11月中旬になると雪がつもり出す。


もう、そうなると俺は活動停止だ。


お江と鶴美は樺太城の庭で雪合戦をしている。


俺はトゥルックから送られた狼の毛皮にくるまる。


「御大将、出港の準備整いました」


と、宗矩が知らせてくる。


北条氏規と板部岡江雪斎に帰国を告げる。


「来年の春にまたくる。アイヌ民との共生を心にとめおき開拓を続けてくれ」


と、北条氏規に言うと


「この度のあの半球体の住居が素晴らしく、常陸大納言様に助けを頼んだのはまさに神様のお導きと言うことでしょうか」


「そう言ってもらえる光栄の極みだな。もし、神社を建てるなら鹿島神宮分社をお願いしたい」


「はい、すぐに建てましょう」


「そう焦らなくても良いから、また来年と春に来る、やり残した農政改革をする」


「はい、よろしくお願いします」


俺は見送りに出てくれる北条氏規と共に留多加港に向かうと港ではトゥルックが木の弦で作られた籠を持って待っていた。


「くろさかさま コレ 友好の あかし ワタシのあいぼうのこども」


と、籠を差し出してきた。


中を見るとフワフワムクムクの子犬が二匹入っている。


お江が


「うわ~可愛い~」


と、抱きしめている。


「樺太犬だね。ありがとう、大切に育てるよ。俺の子供達も喜びそうだ」


と、言うとトゥルックは俺の手をぎゅっと握りしめてきた。


「また、来年の春来るから元気でな」


と、声をかけるが何も言わないで目を見つめてくるトゥルック。


綺麗な瞳に5分ほど固まってしまうと、お江が


「小糸ちゃん小滝ちゃん、マコを力付くでも船に乗せて」


と、言うと小糸と小滝が両脇を掴む。


それでやっと動くか動かないかの俺にお江は腰に抱きつき後ろにズリズリと引っ張られて船に乗る事になってしまった。


「お江、なんで別れを邪魔するんだ」


「もう、また、増えるじゃない。今回は増えないようにって初姉上様からキツく言われてるんだから」


「え?なんだって?」


聞こえたが聞こえていないフリをするためラノベ主人公の名言を真似してみた。


「もう、良いの。ねぇーワンちゃん」


と、お江は二匹の犬を抱きしめた。


船は雪景色した、樺太を後にする。


鶴美は涙ぐみながら手を大きく振っていた。


政宗一行は静かに亡くなった家臣の魂に向け合掌していた。

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