第295話 新家屋革命
アイヌ同盟から二週間、樺太の紅葉は早くも色づき始めていた。
朝には霜が降り寒い。
そろそろ帰らなければ、いや、寒さから逃げたいと思い出していると留多加港で新しい家を作っていた左甚五郎から完成したと連絡が来たので見に行く。
同盟以来トゥルックは毎日城に来ては、何かあったときの道案内、通訳になると言って通ってきていた。
お江は何かを警戒している様子だったが、俺、むやみやたらに手を出しているつもりはないからと言いたかったが、最近、お初に似てきたお江には黙っておいた。
留多加港に行くと、二件完成していた。
それは三角パネルを組み合わせたドーム型の家だ。
ドーム型は耐震耐風耐雪、大変優れた物だ。
「おぉ、俺の設計図でちゃんと完成させるのだから流石、左甚五郎」
「お褒めの言葉ありがとうございます。パネルは二十構造にいたしまして、中に干し草などを詰めて熱が逃げないように工夫いたしまして、建物中央に囲炉裏を置くので天井に明かり取りと煙逃がしとして、二段構造にいたしました」
「流石だ、流石、左甚五郎だ」
中に入ると隙間風など感じない、囲炉裏の温かさが逃げていなく体感で24℃はある。
「ふしぎ あたたかい かぜ はいらない」
と、トゥルックもおどろいていた。
「この家の作りを樺太の地の基本構造として広めようと思う。もちろんアイヌの者達にも教えるぞ」
「かんしゃする これが はってん すると いうことか」
と、驚いている様子だった。
「甚五郎、伝授は大丈夫だな?」
「もちろんでごぜえます。北条の大工達に厳しく教え込みましたから」
「なら、今年は帰ろう」
「はい?」
と、甚五郎に続いてトゥルックも
「かえるのか?」
と、困惑の表情を見せている。
「マコは寒くなると使い物にならなくなるよ。それこそ熊みたいに冬眠しそうなくらいになるもん」
と、お江が言うと甚五郎は握った右手を左手のひらに当てて
「なるほど」
と、わかったみたいだった。
「かえる そうか かえるのか」
と、どことなく寂しげに言うトゥルックの表情に心に何かが突き刺さった。
萌え~~~~~。尊い・・・・・・。
ドーム型から外を覗くと粉雪が風に乗り舞い散り出していた。
樺太の秋は短かった。
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