第279話 萌オムライス

 茶々が点てた茶で一息入れた信長は蘭丸と茨城城自慢の風呂に入った。


蘭丸と二人で・・・・・・。


何も言うまい。


俺はその間に台所に向かうとすでに桃子達がもてなしの料理の下準備をしていた。


「せっかくだから、トマトケチャップ使うから」


と、調理を変わる。


俺は捌きたての鶏の肉を細かく切り、炒めながらご飯も一緒に炒める。


そこにケチャップを投入してチキンライスを作り、玉子3つを使ったフワフワオムレツを作って平皿にこんもりと盛り付けしたチキンライスに乗せ、真ん中を割りフワトロオムライスを作る。


そして、牛皮で作ったケチャップ容器から細くケチャップを出して、文字を描く。


秋葉原のメイドカフェを思い出すような「萌」と、書いて風呂上がりで涼んでる信長に持って行く。


「萌?なんだ、これは?字はどうでもよいが、なぜに真っ赤な汁なのだ?」


「これ、以前に信長様がくれた種を育てたやつですよ」


「なに?あれは鑑賞するためにと思ったものだが」


「育てて実ったら俺が知っているトマトだったので、食用にしましたよ。トマトは健康にとてもよい食べ物なんです。真っ赤が不気味で毒っぽいとお考えでしたら俺が毒味して食べて見せますよ」


「必要ない、常陸の料理に毒など入っているなどと思うものか」


と、言って一口運ぶと


「酸味とうま味が合間った絶妙な塩梅の汁で美味いな。悪くない、そうか、あれは食えるのか」


「生はうちでは不評だったので、熱して調理しましたが生でも食べられます。赤い成分にリコピンと言って老化防止になる成分が入っていて未来では良く食べるよう奨励される作物なんですよ」


「そうか、ならこれは広げなければな」


と、言いながら黙々と平らげた。


「生はないのか?」


「ありますよ。夏の間は次々に実るので。子供達は好きなので井戸で冷やした物もあります」


と、力丸に取りに行かせるとよく冷えたトマトを持ってきた。


信長はそれを豪快にかぶりつく。


「ははは、確かに青臭いが悪くはない。昔、瓜を馬上で食べていたのを思い出すわ」


信長の味覚にはトマトは合ったようで喜んで食べていた。


「未来だと品種改良されてもっと甘味もあって食べやすいんですけどね」


「食べやすく改良出来る物なのか?」


「すみません、そっちの勉強あまりしていないのですが、甘い実のなる苗の品種だけを選んで花粉を組み合わせて作っていくはずですよ」


「そこまで常陸に求めようなどとは思ってはない。しかし、確かに熱を通したのは食べやすかった。儂の料理人にも伝授させてくれ」


「はい、わかりました。これで少し塩分控えめになっていただければ、信長様長生きできますからね」


「塩分控えめ?」


「あ~、はい、塩辛い食べ物は血圧を上げて、脳や心臓の病気になりやすくしますから少し控えて下さい」


「ん、そうか、薄味は水っぽくて嫌いなのだがな」


「わからなくはないですよ。俺も味濃いめのが好きですから」


「このケチャップとやらは気に入った。味噌を少なくしてこれに変えてみるのも悪くはないな」


桃子が作った和風トマトケチャップは出汁多め、塩少な目、とても健康的な代物。


これが信長の健康寿命を延ばす事になると良いのだが。

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