第278話 織田信長来城
真夏の盛りの俺の執務室は茨城城天守最上階。
扉を開け放ち霞ヶ浦から吹いてくる風で涼みながら執務をこなしている。
ふと、外が何やら騒がしく天守の高覧から覗いてみると、南蛮傘の馬印と300人ほどの行列が目に入った。
「はあ?まさか、え?」
と、身を乗り出して目を凝らして見ていると、階段を駆け上がってきた義康が、ゼーハーゼーハーとしながら
「上様、御来城にございます」
「あっ、やっぱり、あの行列そうなん?聞いてないんだけど」
目を凝らして見ていると行列は旅装束の足軽のようで当然攻めてきたわけではない。
攻められる理由もない。
俺は天守から下り大手門で待っていると、
「遊びに来た」
と、言う南蛮服の信長。
「来ていただくのは構わないのですが、先に知らせて欲しかったです」
と、俺が言うと
「まぁ、そう言うな。思ったより艦隊の修復再編成が遅れていてな、治った船だけで近海を訓練航海しているのだ。ちょうど常陸沖まで来たから、噂の城を見に来たのだが・・・・・・馬鹿か」
と、開いた大手門を左右に風神雷神萌美少女を見て呆れている。
流石の信長も呆れたのと驚きとで頭を抑えていた。
「良いでしょ。俺の大好きなレ○とラ○を風神雷神にしたんですよ」
「なんだ、その名は?故郷に残した女の名か?」
信長が注意深い、俺が未来から来ているのを知っているのだから「未来に残した女の名か?」と、聞くところを「故郷」に言い換えてる。
「ははははは、そうですね。芝居の登場人物と言ったところですよ。さぁ、準備なにもしてないですけどどうぞお入り下さい」
と、中に案内する。
後ろにいた森蘭丸が笑いを堪えるように腹を抑えて
「あは、ぷっ、くくくくっ、こりゃ酷い」
と、俺の肩を軽く叩いていた。
蘭丸にはこの萌美少女の良さをわかってもらえないようだ。
悔しい。
茨城城には信長が来たときの為に建設当初から御成御殿を造ってあるのでそちらに案内すると、廊下から見える天守の美少女装飾に信長は、
「うっ、これが未来で流行る物なのか?」
と、俺と蘭丸と力丸しかいない所で目頭を抑えながら言っている。
感動しているのか?いや、違うみたいだ。
「はい、日本が誇る萌文化は世界中に広がるんですよ」
と、俺は誇らしげに言うと、
「そっ、そうか、なら何も言うまい。しかし、これが常陸の美的感覚なら、いつぞやの名物茶碗・曜変天目茶碗に興味がわかなかったのもわかる気がする」
「わびさびがわかるには、そこそこ年齢を重ねないと。俺にはあのような茶碗より美少女が描かれた器の方が好きですがね」
「なら、作れば良かろう。それだけの財力はあるはずだぞ」
「あー、焼き物を美少女絵付けにするの考えてなかったです。良いですね、それ、やらせましょう」
と、言うと信長は頭を抱えた。
「常陸様、上様は冗談で言ったつもりだったのですよ」
と、蘭丸。
「いやいや、俺は今の一言で作るつもりになっちゃったんだけど」
と、言うと蘭丸も頭を抱えた。
「義父上様、ようこそのおいで、今、茶を点てますね」
と、武丸を抱きながら入ってきた茶々。
「おぉ、これが常陸の子か、どれ抱かせろ」
と、信長は武丸を抱くと武丸はじっと信長を目を見つめ、
「あぱー、あぱー、きゃっきゃきゃっきゃ」
と、声をあげて喜んでいる。
普段愛想の少ない武丸にしては珍しい。
「常陸、この子は良き子に、良き男に育つぞ、大切に育てよ」
と、信長は武丸の目の奥に何かを感じ取ったのだろう、しばらく抱いていあやしていた。
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