第268話 五浦城城主・伊達政道

 俺は磐城と常陸の国境の史実世界線で言う、北茨城に伊達政道と共に南蛮型鉄甲船で向かう。


目的は城の受け取りのためと確認だ。


藤堂高虎に任せておいた城が完成に近づいたので、かねてから計画していたとおりに伊達政道を城主として任命、その受け渡しの確認のために出向く。


北茨城の絶景と知られる五浦海岸から少し北に向かうと入り江を利用した港が築かれている。


その港も城に含む海城だ。


南北に細長く、北は平潟港、南は大津港と言う二つの港を持つ城。


北端の岬には灯台を兼ねた天守が建っている。


「政道、この城を五浦城を頼んだぞ」


と、海から眺めながら言うと、政道は、


「まさか本当に城をくださるとは思ってもいませんでした。しかも、常陸国にとってこの地は北からの守りの地、よろしいのですか?伊達を信用なされるのですか?兄上様と結託するやもしれませんよ」


政道の兄はあの、伊達政宗だ。


「大丈夫、政宗殿の目はすでに海の外だよ。この前、夜通し話したら日本国の小さな事に驚いていたし」


そう、伊達政宗とはじっくり語り合った仲、細かくではないが世界地図を軽く書いて日本がどれだけ小さな国で、その中で同族人種が争ってきたかを語ったのだ。


「御大将は本当に不思議だ、海の外の国の魅力をよく語られる」


「ここだけの話だが、行ったことあるからね。だから日本がどれだけ小さな国だかが自分が一番わかっているから」


「御大将自ら異国にですか?」


「はい、ここまで、これ以上は禁則事項です」


と、俺の好きなキャラをモノマネしながら口に人差し指を当てて言うと、政道は壺にはまってしまったのか大笑いしていた。


「あはははははははははは、なんですか?それは?」


「まあ、細かいことは気にするな。平潟城は見ての通り港が複数ある。いずれは一つを軍港とし、一つを貿易船が出入りするように考えている。頼んだぞ。それと、ほかの家老職と同格になるように2万石を加増する。合わせて4万石だ、側近纏役奉行の仕事はこれから最上義康に引き継いでくれ、政道は常陸国北方開発担当奉行とする」


「かしこまりましてございます」


役職ネーミングセンスのなさが俺自身わかっているが、わかりやすい役職名にした方が何をする家臣・重役なのかわかりやすいと考えでネーミングする。


「まずは、ここのすぐ陸地、中郷と呼ばれる地で石炭採掘を初めてくれ、政宗殿手配の金堀衆も着任しているはずだからな」


平潟城城下には伊達政宗が派遣してくれた金堀衆が住み始めたとは連絡は来ている。


俺は地図を渡す。


「この地を掘れば良いのですね?陰陽力で占った地ですか?」


と、地図を見ながら言う政道。


「あっ、うん、そういうところだ」


俺は常磐炭鉱の歴史を授業で習った中学時代に興味が湧き、お祖父様に頼んで連れてきてもらい、散策したことがあり坑道の入り口を知っていた。


その地を思い出しながら地図に書いたのだ。


常磐炭鉱と言うと、どうしても福島県いわき市のイメージが強いだろうが、北茨城市にも坑道の入り口は存在し、昭和の半ばまでは使われていた。


船から下りると藤堂高虎が出迎えた。


「立派な城をありがとう、海から見ただけでも良い作りなのはわかる。景観を崩さぬよう配慮しながら砲台を計画的配置し作っている城、流石だ」


「お褒めの言葉ありがとうございます。その言葉に恥じぬよう次の城に取りかからせていただきます」


「藤堂高虎、この度の築城まことに良し、よって家老職とし1万石を加増し合わせて3万石の領地を与える」


「ありがたき幸せ、また、恩賞いただけるようすぐに出立いたします」


と、言って藤堂高虎は久慈川の河口に向けて出発した。


俺は一泊、平潟城に宿泊した後、茨城城に帰る。


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