第254話 参内献上料理準備

 俺は松の内も過ぎたため、帰宅の挨拶をするために安土城に登城すると、信忠に


「一緒に参内しましょう」


と、言われてしまう。


「御所ですか?帝に拝謁?」


「そうです。常陸殿は大納言、御所に参内が許される御身分です。実は御所でも常陸殿の料理が噂されていましてね、一度献上せよと」


「なるほど、帝に食べていただくとは恐れ多きことなのですが」


「大丈夫です。父上様が認める常陸殿の料理は天下一品だからです」


俺は少し考え、


「わかりました。では、海産物を集めて下さい」


帝に献上する料理は海産物が良いと考える。


獣・動物の肉は天武天皇の時代から制限されていると言う知識があるからだ。


仏教を広げる事に尽力した天武天皇が季節で食肉を禁止し、また、狩猟方法を制限する事から食肉文化はすたれ、また、神道での獣の血は穢れとの意味合いも相まって日本は明治開国まで食肉を忌み嫌うようになる。


しかし、うちでは関係なく食べている。


農耕につかう牛と別に食肉用に牧畜をしている。


京の都に入る前に蒲生氏郷の城となっている大津城に入る。


大津城は俺の城だったころと変わらず、小規模だが城内で牧畜をしているので鶏肉・豚肉・牛肉を念のために分けて貰う。


箱に雪を押し固めて保冷庫に入れて食材を集めて、京の都の俺の宿舎となっている銀閣寺城に入城した。


海産物は若狭湾から届く、蟹、牡蠣、海老、鮭、鯛、鱈、そして、


「ん?これって?海豚だね」


海豚が丸々一匹届く。


俺は平成時代では茨城ではごくまれに海豚がスーパーで売られていたし食べたこともあるから驚きはしない。


海豚、鯨はこの時代は魚として扱われている。


献上料理にするか。


ゴボウと一緒に味噌で煮る食べ方が俺は好き。


茨城城で料理を学んだ小糸と小滝に下準備を頼むと流石に海豚は捌けないと言う。


困っていると、柳生宗矩が見事な刀捌きで海豚を肉に切り分けた。


流石に柳生新陰流の使い手。


使う場が違う気がするが仕方がない。


明日の参内に合わせて下準備を滞りなく済ませた。

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