第252話 織田信忠

 織田信忠は安土城の第二天守である観音寺山城を居城としている。


織田信長が不在でも安土城を居城とはしていないのは、織田家の家長はあくまでも信長である!と、言う現れでもある。


そんな観音寺山城は負けず劣らず豪華な城、堅牢な守りを持つ城に登城すると、天守最上階に案内される。


俺が登城すると言うことは、なにかしらの秘密の話があるからとも思われるからだが今日は特段未来の知識の話はない予定。


織田信忠は俺が未来人であることは知っている。


天守最上階に入室が許されたのは俺と力丸だけ、入室して五分程すると、信忠が入ってきた。


俺は畳に額を着けるくらいに平身低頭するが、


「常陸殿、あなたは客分にして義兄弟、そのようにいたさなくても」


と、言われてしまったので頭を上げる。


「珍しいですね、安土に来るの」


「えぇ、頼みたいことがありまして」


「おや、それもまた珍しい、常陸は多くをのぞまぬからな!と、父上が申しておりましたが、領地ですか?金ですか?それとも女子?」


「ハハハハハ、もう十分ですよ。頼みたいことは家臣の事で」


「家臣?与力を増やしますか?」


「いえ、今、派遣してくれている、森力丸・前田慶次・柳生宗矩・真田幸村・山内一豊・藤堂高虎、それと狩野永徳を直臣に致したく与力からの黒坂家転籍を認めていただきたく」



俺の重臣の森力丸・前田慶次・柳生宗矩・真田幸村・山内一豊・藤堂高虎、それと狩野永徳は織田家から派遣されている与力。


俺も給金・領地は渡しているが基本的な主家は織田家なのだ。


「あっ、まだ与力でしたか?力丸以外は認めましょう。とっくに黒坂家の家臣だと思っていましたが」


「力丸は駄目ですか?」


「力丸には、申し訳ないが常陸殿の監視をしている役目がありますからね」


「御大将、私は信長様との織田家との架け橋、どうか御理解を」


「そうか、仕方がないか。俺、中途半端だからね、家臣じゃないのに幕府の要職に就いてるわけだし」


と、ため息混じりに言うと、


「中途半端ですね、家臣でもなく私の義兄弟、そして三法師の嫁の父親になるわけですからね、ははは」


「あっ、それもありましたね。姫産まれましたので信長様との約束は守りたいのですが、姫はしばらくは常陸で育てた後に、三法師様と見合いをしてどちらにするか、決めていただく方法を提案したいのですがよろしいでしょうか?」


「姫二人お生まれでしたね、要は両者が気に入った方を嫁にすると言うことですか?女子を大切にすると噂名高き事は耳にしています。良いでしょう。織田家と黒坂家の縁が深くなれば良いだけの事ですから、お約束いたします」


そう、許嫁として育てはするが最終決定は本人に任せたい。


だから、提案する。


「さぁ、二人になるのも久々、今日は飲み語りましょう」


と、言われて酒が用意されて俺は信忠と酒を酌み交わした。

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