第250話 笠間城新城代

 高山右近の一件により笠間城の城代が空席となる。


常陸国の西の守りの要になる笠間城城代が空席と言うのは周りが敵ではなくても避けなければならない。


家臣のメンバーを見ながら悩む。


誰にする?誰を城代に。


笠間城、笠間稲荷神社、笠間焼き?


「力丸、笠間城の城代なのだが左甚五郎を任じようと思うがどうだ?」


「はい、武士上がりではないので統治に守備をする役目には問題がありますが、左甚五郎殿は御大将の文化的価値観をよく理解する人物、遅れている笠間稲荷神社の改築修繕にもよろしいかとは思いますので、いかがでしょう?左甚五郎殿は城代と致して、守衛隊奉行に新免無二任じましては?補佐させればよろしいかと」


力丸は的確な助言をしてくれる。


「よし、左甚五郎と新免無二を城に呼んでくれ」


新免無二は、すぐ近くの土浦城に居るため、その日に茨城城に登城する。


「新免無二、笠間城付き与力守衛奉行を命じる。上役の城代が左甚五郎になるが命をよく聞いて働いてくれ、左甚五郎は武士上がりではないが俺の手足の存在、粗悪に扱うなよ」


「はっ、かしこまりましてございます」


あの二刀流の使い手の宮本武蔵の父親は雇ってからは、前田慶次に任せてあったが、働きは真面目で、街に潜り込んで消える慶次のサポートを申し分なくしていたらしく、力丸の推挙だった。


その翌日、鹿島城で鹿島神宮改修修繕工事の陣頭指揮を取っていた左甚五郎も登城する。


「殿様、何事ですか?また、何か造りますか?」


「確かに造っては貰うが、先ずは昇進を言い渡す。左甚五郎、家老とし笠間城城代に任じる。鹿島神宮で忙しいかとは思うが笠間稲荷神社の修繕工事も頼む」


「えっ!あっしなんぞがじょ、じょ、じょ、城代ん?冗談?」


「冗談ではない、これまでの働き申し分ない、俺の意図を汲んだ造形物の数々を高く評価出来る。また、今、取り掛かっている耐熱煉瓦作りも笠間のほうが何かと良かろう、よって笠間一帯を任せる」


「もったいなきことにございます。この甚五郎、一生をかけて発展させます。で、笠間稲荷神社には狐を美少女化いたした社殿を希望いたしますか?」


「うん、それしばらく封印で、俺がたまに頼む小物とかには美少女彫刻を頼むけど、寺社は真面目に伝統的な造りで造って貰ってかまわないから」


「では、早々に取り掛からせていただきます」


この後、笠間稲荷神社は名工・左甚五郎の手により荘厳な社殿が造営されるのだがそれはいずれ語る時が来るだろう。


うちは武士でなくとも出世をする、良い前例となって欲しい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る