第249話 高山右近とルイス・フロイス

 翌々日、茨城城の大広間には笠間城城代・高山右近と笠間城に逗留している織田家南蛮寺総代ルイス・フロイス。


この問題の当事者の一人、笠間稲荷神社の改修を任せてある伊達政道。


家臣筆頭の森力丸、重臣の前田慶次に柳生宗矩に真田幸村が集まる。


広間の襖の向こう側には言わずもがな、宗矩・慶次・幸村の手練れの家臣と真壁氏幹が抜き身の刀を持ち控えている。


「政道、笠間稲荷神社の改修は順調か?」


当たり障りなく政道から聞いてみる。


「そ、それが・・・」


「御大将、言いたいことはすでにわかっております。そのように遠回しにいたさなくても」


と、高山右近。


「デウスの加護アランコトヲ」


と、ルイス・フロイス。


「そうか、右近、申したはず。俺は信仰の自由を認めるが寺社仏閣を蔑ろにする事は許さぬと」


「御大将、主はあなた様をお導きせよと仰せです」


「誰が言った?そこのルイス・フロイスか?俺は改宗はせぬぞ」


「オーマイゴット」


ルイス・フロイスが鬱陶しい。


流暢な日本語を話していたのに、なぜか今日はカタコト外国人。


「ルイス・フロイス、幕府南蛮寺総代を利用し高山右近を説き伏せ常陸から乗っ取るつもりか?」


と、力丸。


「オウッ、ナンノコトダカワカリマセンネ」


「民を海外に売っているのは、すでに調べがついている。御大将は人の売り買いをなくそうとしているのにあるまじき行為、恥を知れ」


と、大声を張り上げ刀を抜きそうな勢いの慶次。


慶次は人の売り買いの流れも調べていた。


ただただ、飲み歩いているわけではない、遠山金四郎みたいな感じだ。


「御大将、溢れかえる下々の者をこの国にあふれ返していては国の為にはなりません」


と言う右近に宗矩が、


「口を慎め、今そのような者を減らそうとしている御大将のお心がわからぬとは情けなし」


「右近、残念だが俺の命じた事を守れぬ者を当家で雇い続ける事は出来ぬ」


「切腹ですか?私はキリシタン、自害は主が許しません」


「そうそう軽々しく、命のやり取りの話しをしてくれるな。切腹は命じぬし磔や火炙りにもしないが蟄居を命じる」


「御大将、生温きかと」


「力丸、そう言うな。命取るのは容易きこと、だが、高山右近、働き場所さえちがければ才能は生かせる。筑波に作った牧場に笠間の城は申し分ない働きだった。ただ、今回のように宗教に関する事には俺とはわかりあえないだけのこと、それとルイス・フロイスをそばに置いていてはいかぬだけのこと」


「ごもっともには御座いますが、御大将」


「慶次、これはもう決めた事、高山右近、笠間城城代の任を解き、蟄居を申し付ける。また、ルイス・フロイス、そなたも同様に蟄居を申し付ける。幕府には俺から南蛮寺総代の地位を剥奪するよう言上した上で国外追放にいたす」


「オウッ、アナタは悪魔にトリツカレタカ」


「控えよ、ルイス・フロイス」


慶次が頭を無理無理、畳に押さえ込む。


「ルイス・フロイス、不都合を悪魔や魔女を言い訳にして次々に縛り首にしていくローマのやり方には賛同出来ないし、俺も同じにはなりたくはない。ルイス・フロイス、良いか、覚えておけ。地球は太陽の周りを動き宇宙は広がり続ける。それを否定するお前達の主は400年後「過ちだった」と、謝罪するんだ」


「悪魔、悪魔、悪魔、悪魔、悪魔、悪魔、アクマダー」



ルイス・フロイスは発狂するが慶次が押さえ込み続けると気絶した。


二人は座敷牢に閉じ込められる。


俺は安土にことの次第を手紙に書き知らせると、あっさりと受託されルイス・フロイスは大阪城に移され、高山右近は黒坂家の与力からはずされた。

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