第248話 金砂郷神社大祭

 田畑から場所を移した。


高野城の城内に入り、対面所となる広間に入る。


長介を白砂と呼ばれる庭に通す手はずだったらしいが、玉砂利の上に罪人でもない者を座らせたくはなく、広間に通させる。


俺は一段上の上座、長介は一段下の下座、俺と長介のあいだには茨城城から駆け付けた森力丸と柳生宗矩と真田幸村と前田慶次が座る。


長介が緊張で震えているのがわかる。


頭を床に着けて震えている。


「直答を許す」


と、力丸が長介に向かって言う。


「長介、面を上げて何を直訴に及んだが申せ」


と、幸村が言う。


「はい、この命をかけて申し上げます。高山右近様、伴天連の神を信仰厚く、寺社を蔑ろにしております。金砂郷神社の御魂を浄めるための祭りの開催を許可していただけなく、困っております」


知っている。


史実歴史時代線の平成でも72年に一回と言われる大例祭が行われた。


御魂を海で浄める為の儀式。


非公開とされている御魂は一説には鮑の貝殻と伝わっている。


金砂郷村から海まで大名行列みたいな行列で、御魂を運び浄める儀式。


「高山右近は、邪魔をするのか?」


「はい、大例祭を許可していただけなく、勝手に行えば一揆として村人全員を磔にすると申しておりまして、大和国の神々を厚く信仰している黒坂様とは正反対で困り申しております」


「うん、俺は日本国の神々の力をお借りする身、蔑ろにはしたくはない。だが、伴天連の神々を否定する気もないのだが、高山右近にはそれを申し付けてあるのだがな」


「御存知ではないのですか?笠間稲荷神社も朽ち果てようとしています」


「あれ?整備、改修を頼んだのに真か?」


「はい、南蛮寺は大きくなる一方に対して笠間稲荷神社には一切手付かず」


任せておいたのが悪かった。


茨城県の聖地たる笠間に高山右近の相性は悪かった。


高山右近、水戸城を任せるべきだったと俺は気がついた。


「死人はでたか?」


「いえ、投獄されし者は御座いますがまだ死人は」


ホッと肩をなで下ろす。


「あいわかった。力丸、高山右近に茨城城への登城を申し付けよ」


「かしこまりました」


と、返事をする力丸の後に慶次が、


「斬りますか?」


「いやいやいやいや、次から次へと暗殺はしないで良いから、慶次、忍びの暗殺は許さないからな」


小野忠明の一件がある。


家の重臣の前田慶次、真田幸村、柳生宗矩、伊達政道は配下に忍びを持つ。


そのため、俺が首に扇子を当て斬る真似事をするだけで暗殺は容易なのだが、高山右近を暗殺する理由はまだない。


茨城城に呼び出し詳細を本人から聞くのが一番だと思う。


暗殺する理由はない。



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