第239話 臨月

 1589年、学校運営に力を入れていると蝉が鳴き始める。


茶々のお腹はちきれんばかりに大きく育っていた。


暑い夏に妊婦さんは暑くてもつらそうだ。


「茶々、大丈夫か?」


「はい、もうすぐ子が産まれるとなるなら辛くなど有りません」


茶々は自ら、産まれてくる赤ん坊の為の産着を縫っている。


「そうか?すまないがこの時代が医者やら産婆やらは良くわからないのだが、とにかく人を集めて」


「真琴様、そのような事はいたさなくても大丈夫です」


「ん?」


「一月ほど前に母上様に手紙を書きました」


「義母様?お市様に?」


「はい、母上様が来てくれるとのことでもうすぐ着くかと」


「え?え?そうなの?聞いてなかった」


「真琴様は大変お忙しいそうでしたので」


確かに毎日執務に終われる日々なのだ。


茶々は気を使ってくれていた。


そんな話をしていると、その日の夕方には大名行列と思うばかりの300人程の行列が茨城城に入城した。


もちろん、お市様の行列なので大手門で出迎える。


いくら身分、官位官職が高かろうと俺にとっては義母、出迎えるのは当然。


籠はなぜか2つ並んでいた。


ん?


その籠からは、お市様と前田利家の妻、松様が降りてくる。


「遠路、足を運んでいただきありがとうございます」


と、挨拶をすると、


「久しぶりですね、真琴様。茶々の出産を手伝いに来ました。お初や側室方も出産は年内そうですね?しばらく逗留して手伝いますよ」


「ありがとうございます。で、松様もですか?」


と、松様に挨拶をすると、


「何やら珍しい城が見れると近江でも噂でしてね、お市様が行くと耳にしたのでお手伝いも兼ねて付いて来ました。本当にこのような城をお建てになるとは」


近江でも噂になるような城、笑うしかないかな。


「ははははは、趣味でして」


「おもしろい、本当に不思議な感性をお持ちで、おもしろいお方、ふふふ」


「褒めの言葉ありがとうございます。茨城城には温泉も有りますので旅の疲れを癒して下さい」


二人は茶々達に会った後、温泉と自慢の料理を楽しんで貰った。

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