第231話 算盤
茨城城に帰ってきてから毎日毎日、茶々達のお腹をさすっている生活を送っているわけではなく、仕事はしている。
ほとんどが執務で力丸達がまとめた書類に目を通して、決済の署名と判を押すのが仕事ではあるのだが、やはり大きな金額の確認も必要となってきている。
当然だ。
領主なのだから。
暗算では流石に厳しくなる桁数の数字。
いまだに動き続けてくれている耐衝撃型スマートフォンの電卓アプリを使っているのだが、電池の消耗は激しく長くは使ってはいられない。
そこで、左甚五郎にある物を作らせた。
簡単な図面を書いた指示書を鹿島神宮にいる左甚五郎に送る。
すると三日もしないうちに出来上がってきた。
恐るべし名工・左甚五郎。
算盤はもともと、戦国期には貿易が盛んとなり商人が大陸伝来の算盤を使っているのは知っていたが俺が知っている物とは球数が違う。
俺が知っているのは5の球が1つ、で1の球が4つのタイプの物だ。
それを図面に書いて左甚五郎に作らせたのだが、いらぬ細かな細工が施されている。
・・・・・・。
算盤の枠に何人の美少女が彫られているのやら。
算盤にまでそのような細工は欲しいとは思っていなかったのだけど、左甚五郎は完全に俺の欲しがるものは、そう言う物だと思っているようだ。
あっ、確か、算盤って前田利家が意外にも使うんだよな。
平成で現存する算盤が確か前田利家の算盤が一番古いとか、福岡藩の物が古いとか話題にもなったし。
槍の又左が算盤の又左になるのだから文部両道の人物、歌舞いているのは上辺だけで実は真面目君な気もする。
そうだ、算盤は確か高級品だから贈り物には悪くないかも、いつぞやは前田家には世話になったから左甚五郎にもう一つ作ってもらって送ろう。
さらに一つ作ってもらう。
俺が使うのではなく贈り物だからと注意書きを書いて手紙で指示をする。
出来上がってきたのは無難にも鶴と亀の彫刻が施された算盤だった。
まぁ、左甚五郎作と言うだけの事はあって無駄に豪華な彫刻。
それを前田利家に送ると、案の定気に入ってくれたらしく、返礼として朱塗雲龍蒔絵大小の刀が送られてきた。
御礼の御礼になっている気がするが、これ以上何かを送るとスパイラルになりそうなので止めておこう。
朱塗りの下地に金の雲龍蒔絵は傾奇者に相応しい派手な絢爛な備えの刀。
元値が釣り合わない気がするが受け取っておく。
床の間に飾るにはとても良い見た目だ。
しかし、左甚五郎は本当に器用だ。
俺の家臣と言うのは才能の無駄遣いな気もするが、これからも楽しみだ。
これからの俺にとって、器用な家臣はなくてはならない存在になるのだから。
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