第228話 伊達のお・も・て・な・し・9
翌日、早朝、外が騒がしい。
馬の無数の足音で目が覚めた。
「何事、宗矩、外の様子は?」
と、俺は寝間着姿で飛び起きる。
隣の控えの間の宗矩はすでに外の様子を見ていたようで、
「問題ありません、伊達政宗殿、御到着にございます」
と、外が見える戸を開けると竹に雀の家紋の旗指物がなびいているのが見えた。
鬼庭綱元が走ってくる。
「常陸様、伊達政宗到着いたしました。昼夜を問わず馬を走らせてきたよし」
「そうか、ならまず湯に浸かってから、しばし休んでから挨拶に来るよう申せ」
「はっ、お心づかいありがとうございます」
伊達政宗、韋駄天の伊達と言われるだけある。
平成では伊達(だて)と呼ぶのが一般的だが、伊達政宗がバチカンに送った書状の署名にはIDATEの綴りがあり、伊達(いだて)と呼んでいたと言われている。
仙台に知らせが届くとすぐに支度をして馬を走らせて来たとのこと、二日で仙台から磐城まで来たのだから疲れているはず。
政宗は風呂に入り、身なりを整え昼前に挨拶に出向いた。
紺碧の藍色にカラフルな水玉模様の入った羽織を着ている。
「常陸大名護名様には、当領地に出向いていただき光栄の極みにございます」
「いやいやいやいや、ゆっくりさせていただいてこちらこそ良い時を過ごせていますよ。それより、仙台から馬を走らせてお疲れでは?」
「なに、これしきの事、常陸大納言様のお顔を見れたならば疲れなどと言う物は消え失せます」
「御無理はなされるな、若いからと言って無理をすれば必ずやしっぺ返しが来ますから」
「はっ、心に留め置いておきます。それより、この宿、温泉、料理、女子は満足していただけましたか」
「温泉、料理、宿には申し分なし、だが、女子はああいった扱い方は今後はしてくれるな、俺は確かに側室も何人もいる女子好きだが、売り買いは好まぬ、だから、うちでは売られている娘を買っては城で働かせ勉学や機織りなどを教え、働き手となるようにしているのだ。今後は女子に織物や陶器・漆器・製紙・工芸細工品を学ばせ作らせれば異国に輸出が出来る品々が作れる。大切な働き手にしたいのだ」
「この政宗、思慮の浅きことをしてしまいました。お許しください」
「政宗殿、政宗殿も大国の主、これからは売られる女子供がなき国を作れるようお互い励もうではないか?」
「はい、いちいちごもっとも」
「政宗殿の領地ならば、開拓次第では米どころになりますからな、東の海に面したこの地は冬も雪は少なく、夏も暑すぎず住み良き地、お互い隣同士、協力し合って良き国を作りましょう」
「はっ、この政宗、常陸大納言様の家来と思って何でも申し付けてください」
「はははっ、主は織田家、それを間違っては困る」
「常陸大納言様には、二心は?」
「勘違いされるな、俺は織田家の臣下にはなっていないが織田信長様には一生涯協力をするつもりだ、この国を再び戦乱の国に貶めようとするものあらばねじ伏せる」
と、厳しい目で睨みつける。
「政宗の戯言と思ってお許しください」
「政宗殿、政宗殿はお若い、だからこそ野心があるのは当然だが、狭き日本の国内にその野心を向けるのではなく海の外に向けたらいかがか?」
「海の外?」
「海の外には、日本より大きな大地が広がる。その地を目指すのです。信長様はすでに海の外に出られた。政宗殿が希望するなら信長様に乗船できるよう推挙しますよ」
「ぜひ、行きたいものです」
「だったら、世継ぎを作り領国の治世を盤石な物にいたしてください」
「はい、かしこまりました」
この日、伊達政宗と語りあかして飲みふけった。
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