第225話 伊達のお・も・て・な・し・6

 流石に、三日目ともなると多少は飽きては来る。


そこで近くを散策したいと言うと、1000からなる兵士が集められてしまった。


俺の五浦から呼び寄せた兵士600と鬼庭綱元の兵士だ。


それは仕方がないが、甲冑の必要はあるのだろうか?


戦場でもないのに。


俺は平服で帯刀して、馬に乗る。


向かいたい寺がある。


史実歴史時代線では、国宝の白水阿弥陀堂だ。


泊まっている宿屋からは馬でなら二時間もしない距離にある。


峠道を進むと直ぐに着いた。


浄土式庭園と呼ばれる庭を持つ阿弥陀堂は、平泉で有名な奥州藤原氏の藤原清衡の娘が建てさせたら阿弥陀堂で、四方を山に囲まれた地に極楽浄土を模したと言われる庭がある。


全盛期よりは縮小されているらしいが、それでも美しい庭だ。


阿弥陀堂には壁画が描かれているが、風化が激しい。


平成ではよくよく見てもわからないほどであったのだが、今なら幾分見える。


阿弥陀堂にお参りをし入口の階段に腰を下ろし、庭園と山々を心静かに見渡す。


「綱元、内政干渉になってしまうが、この白水阿弥陀堂を保護してはくれぬか?寺社領を与えるのと、この阿弥陀堂の修復保存を頼みたいのだが」


「はっ、仰せのままに」


「新しき文化にばかり目を向け、古き文化の継承を怠る国は滅びる」


「ごもっともにございます」

 

「政宗殿はそのあたりをよく御存知だろうから、いらぬ口出しかもしれぬがな」


「いえいえ、伊達家の家訓に取り入れさせていただきたく」


「そう言って貰えるとありがたい、今日はここでしばらく過ごしたい」


俺はそのまま、阿弥陀堂からの景色を堪能しながら心を落ち着けた。


池には桜の花びら、それを食べる鴨たちの鳴き声が心地良く聞こえてくる。


まるで心が浄化される一時。


極楽浄土にはまだ行ったことないが、この心地良い空間がもしかしたら本当に極楽浄土なのかもしれないなと、ふと思う。


日が傾きだした頃に宿に戻った。


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