第224話 伊達のお・も・て・な・し・5
朝食を済ませた後、光衛門が朝の挨拶に来た。
「おはようございます。いかがでございましょう、当宿は」
「申し分はない、ないが、あのように孫娘をまるで生贄に差し出すようなマネはやめていただきたい」
「とんでもねぇ、生贄などと、ただ、大納言様の御傍に仕えさせることが出来れば当家の誉れ」
「いらぬことだ」
「せっかく親類から器量が良いの娘を見繕って買い取って来たんだが、仕方ねぇ、また、売りに出すっぺ」
「孫娘ではないのか?」
「残念ながら、孫は男しかいなくて、男でもよかったら差し出しますっぺ」
衆道ルートは俺の人生にはないぞ、絶対にないからな。
「衆道は好まぬ。売りに出すのか・・・・・・」
「はい、小名浜城城下に遊郭が出来たんで、中々の値がつくんだ」
「やめろ、女を売り買いする話も好まぬ、仕方がない、俺が買い取る」
「え?では、側室に?」
「なるやもしれぬし、ならぬかもしれん、しかし、あの二人以外にはいないのだな?」
「今、用意できたのはあの二人で、他にも用意できますが」
と、光衛門が言う。
どうもこの爺様は世直しが好きな光衛門ではないらしい。
商売上手というのか、自分の店の家格をあげる為なら手段を択ばないと言ったところなのだろうか。
「政道、綱元を呼べ」
政道に綱元を呼ばせる。
「綱元、女子の事は知っていたのか?」
「はい、もちろん、気に入りませんでしたか?」
「気に入る気に入らないではない、一瞬しか見なかったが、むしろ可愛い娘だったが、このような接待が続くなら俺は帰る」
「申し訳ないことでございます。すぐに、美少年を」
「だから、そうではない。人を売り買いするのを良しとしていないのだ。今回の小糸と小滝は縁あって連れてこられてしまったのだろ、仕方がないから俺が引き取るが、次このような事をすれば俺は帰る」
「申し訳ございませんでした。どうか、お許しを」
と、言って綱元は短刀を抜いて、腹に突き立てようとするが、宗矩が鉄扇で叩いて弾き飛ばす。
「御大将は切腹での謝罪は許さぬ、控えよ!鬼庭綱元」
「申し訳ございません」
「・・・・・・命をかけた接待なのはわかったが、俺は普通に湯治が出来ればそれで満足なのだ。とにかく過度な接待はやめてくれ、それと綱元、切腹は許さぬからな、頭でも丸めてこい、それで不問にする」
「はっ、仰せのままに」
夕刻には綱元は綺麗に髪を剃り落としていた。
小糸と小滝はとりあえず、身の回りの世話をしてもらうように申し付ける。
まだ、側室ではない。
まだ。
この日の事件から俺は静かに湯を楽しむ日々が過ごせた。
小糸と小滝には湯あみを着させて背中を流してもらう。
初めっからこのくらいの接待なら受け入れたのだが、素っ裸で一緒にって、それはだめだろ。
どうもこの事件で俺の扱い方に困っているらしいが、その都度、宗矩が細かな指示を出しているとのことだ。
あの時、断らなかったら毎日毎日違う娘が来たと思うとゾッとする。
そして、どうも政道が一緒に風呂に入っていたのを目撃したようで、俺の衆道に政道がなっているのでは?と、言う疑惑を持たせてしまったらしい。
いやいやいやいや、それだけはないから。
衆道が一般的な時代らしいが、俺は違うぞ。
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