第223話 伊達のお・も・て・な・し・4

 仮眠をして目を覚ましたころには深夜になっていたが、俺は湯に向かう。


政道も寝ている様子なので声をかけない。


宿の外は、甲冑のガシャガシャと言う音が聞こえる。


宗矩達が騒ぎ立てないのだから間違いなくうちの兵。


五浦城から到着して護衛の任務に就いているのだろう。


宿の中なら間違いなく安全だ。


一応、小太刀は手にし、再び先ほどの岩風呂に入浴する。


夜桜は満月に灯りに映し出され、湯面に桜の散る花びらが少し。


風情が良すぎる。


一人静かに浸かり、


「春の夜の 月明かり桜花 佐波古の湯」


と、一句詠んでいると突如、女体の裸のシルエットが見えた。


月明かりに見えたのは、年の頃合いは17・8歳と言ったところの娘で豊満な胸を隠さず、わざと見せつけるかのように一糸(いっし)まとわぬ姿。


「とても、よろしい歌かと」


俺はすぐに小太刀を構える。


「誰だ!」


「失礼いたしました。光衛門が孫娘、小糸(こいと)、と申します。お背中をお流しいたしたく」


「あ~、あれか、必要はない」


「御遠慮なさらないでください」


「いやも必要がないから下がれと言っている」


「そ、そんな、お爺様から、大納言様に可愛がってもらえ!と、仰せつかっておりますので」


「ぐふぇっ・・・・・・ゴホゴホゴホゴホッ、何言ってんの、そんなこと言わないでとにかく必要ないから」


と、俺が再び言うと、小糸は泣きながら走って出て行った。


なにが起きたのかわからず俺はただ月を眺めていた。


翌朝、朝風呂を再び楽しんでいると、またしても若い娘が、


「誰だ!」


「失礼いたしました。光衛門が孫娘、小滝、と申します。お背中をお流しいたしたく」


またしても一糸(いっし)まとわぬ姿。


俺を誘惑しているのは一目瞭然だった。


こちらは昨日より若い15・6のチッパイな娘。


「昨日も、お姉さんかな?来たけど必要がないから、そういう接待要らないから」


「そ、そんな、覚悟を決めてきたのに」


と、跪いてうなだれてしまう小滝。


「なんの覚悟?俺に抱かれろって言われた?」


「・・・・・・はい」


と、小さな声で言う。


「光衛門には俺から言うから下がりなさい」


「・・・・・・はい」


と、言ってそそくさと出ていった。


こういう接待もこの時代ならありなのか?


はじめっからしっかりそういう事、断っておかなければ宿屋には泊まれないなと思った。






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