第222話 伊達のお・も・て・な・し・3
湯本温泉に一週間の滞在を決める。
部屋に通されると書院作りの上段と下段の間に分けられた合わせて20畳ほどの部屋に通された。
小さな城のような畳が敷かれた部屋。
上段の間に腰を下ろすが、
「んでは、取り敢えず湯に入るよ。支度は大丈夫?俺、温泉宿では何度も風呂入りたい人なので、その辺よろしくお願いします」
俺は平成時代、家族旅行に温泉宿に泊まると湯あたりするのではないかと言うほど湯に浸かった。
温泉はそれなりに体力を消耗したり、肌の油分を洗い流してしまうから一日三回までが良いなどと奨励されているのが一般的だが、俺は宿に着いたら一回、食事前に一回、食後に一回、仮眠して一回、寝る前に一回、朝起きて一回、朝食後一回、宿を出る直前に一回、と、ちょこちょこ何度も入るのが好き。
「御大将、まずはお茶でも」
と、宗矩に言われてしまった。
宗矩がそう言う時は何らかの支度、要するに家臣が風呂や建物を見聞したり護衛の配置の時間が欲しい時なのだ。
仕方なくお茶を飲み30分は我慢した。
「どれ、風呂」
「はい、支度は整いましてございます」
宿の風呂に通されると岩風呂の露天風呂、とても風情のある風呂だ。
俺は裸になり入る。
太刀持ちに、政道がふんどし姿で洗い場で蹲踞座りをしている。
「政道、風邪ひくから湯に入って、護衛は宗矩が間違いなくしているから太刀持ちは不要だよ」
「しかし、御大将、宗矩様に命じられましたので」
「だったら、そこの松の枝にでも太刀を置いて、ほら、ここならすぐに手が届くから、家臣が素っ裸でそこにいるほうが俺の精神にダメージを食らうから」
「だめぇじ?良くはわかりませんが、御大将お望みとあらば太刀は持ったまま、腰までつからせていただきます」
と、言って、太刀を高々と手に持って上げた状態で腰までつかる政道。
まあ、冷えなければよいのだけど、太刀、湿気で抜けなくなりそうな気もするが良いのだろうか。
「常陸様、湯加減はどうですだっぺ」
と、大声で入ってくる光衛門。
「ああ、気持ちいい、桜が咲いたとはいえ朝晩は寒いから、体が冷える。冷えた体をこの湯は温めてくれるのに存分なほどに良い泉質だ。いい湯だ」
「喜んでもらえて何よりですだっぺ、背中をお流しいたしたいですが、こんな爺様より若い娘っ子がよかっぺ?あとで手配しますんで楽しみにしていてくんろ、ヒヒヒヒッ」
と、言って光衛門は出て行ってしまった。
要らない気配りなのだが、その時に断ればよかろうと考えていた。
温泉、ちょこちょこと何回も入るのは好きだが一応は湯あたりを考え一回は15分と短時間で上がるようにしている。
程よいころ上がる。
部屋に戻ると、夕飯の支度が整えられていた。
常磐物と呼ばれる海の幸が食べきれないほど並べられた食事。
舌鼓を打ったあと少し横になり休んだ。
これぞ湯治だ。
湯に入って、食べて、寝て、湯に入るの繰り返し、何気に仕事していないように見える俺でも日々の執務は激務、しかも夜は子作りで激務、久々にゆっくりとゴロゴロできる。
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