第220話 伊達のお・も・て・な・し・1
南蛮型鉄甲船艦隊の補給と船員の休息をかねて3日ほど五浦城に逗留すると、伊達成実からの使者が来た。
南蛮型鉄甲船艦隊が目立ち、往来する旅商人などですぐとなりの小名浜城の伊達政宗の重臣の伊達成実に耳に入ったようだ。
「伊達家家臣、鬼庭綱元に御座います。成実と共に磐城を任されております。この度は、常陸様が近くにおいでと耳に入りまして、どうか一度伊達領内で御接待いたしたく」
「鬼庭殿、久しぶりですね。そうか、伊達領内、奥羽の巡察も俺の役目になるわけか、んー、今回は支度出来てないから次回って事で」
鬼庭綱元が領内に来て欲しいと言う言葉で、すぐとなりにいる柳生宗矩が、明らかに「行ってはなりません」と言う顔をしている。
「護衛ならこの、綱元が命を懸けてお守りもうします」
「俺的にはね、信用してないわけではないんだよ。輝宗殿が政道を俺に預けているわけだし輝宗殿まだ健在なんでしょ?」
「はい、大殿は秋保で湯に浸かっております」
「良いなー温泉、うちにもなんとか湧き出したけど、陸奥は温泉が豊富だから羨ましいよ」
「でしたら、いかがでしょう。湯本にも湯が湧いております。湯治として来てはいただけませんか?」
と、鬼庭綱元も子供の使いではないためか領内でどうしてももてなしたいらしい。
宗矩の顔を見るとよい顔はしていない。
「綱元様、どうしてそこまで御大将に出向いて貰いたいのですか?」
と、宗矩が口を開く。
「はい、奥州に多大な領地を頂き、今、城をいくつか築いております。それが幕府に疑念を抱かせる事になるかと、だからこそ、副将軍であられる常陸様に領内巡察、見聞をして貰えばと」
至極当然な事を言う綱元。
「確かに理にかなった申し出、俺にはその役目もあるらしいから、仕方がない、近くまで来たわけだし、今回は湯本の湯に浸かるだけの約束で、磐城国に入ろう」
「御大将」
と、少し困った顔をする宗矩。
「大丈夫、政宗殿は卑怯な振る舞いはしないよ、だいたい、前の歴史では宗矩と政宗って飲み友達なのに」
「御大将?」
「あ!今の言葉は忘れて、さぁー常磐湯本温泉入ろうじゃないか、護衛は50の馬上火縄銃改隊とする」
その日の昼に、旧勿来の関の山を通と山桜が満開に咲いていた。
「吹く風をなこその関と思へども道もせにちる山桜かな」
「おっ、御大将にしては良い歌を読まれますな」
と、宗矩に褒められてしまったが、
「これは源義家の歌だよ、俺が読むなら、「勿来関 永久(とわ)に咲き誇れ 山桜」だな」
「随分短い歌で」
「俳句だよ、5・7・5文字の歌ならそこそこは読めるんだけどね」
「その歌なら、慶次殿も目をつり上げないかと」
「ははは、慶次は歌には五月蠅いからね」
「勿来、磐城が永久に山桜が咲き誇るように繁栄して欲しいと言う歌ですか、ありがたい、是非ともここに歌碑を作らせていただきます」
「ちょっと、ちょっと、そんな歌碑だなんて、綱元殿」
ちょっと遊び心で読んだつもりの歌が歌碑なり後世に残るようになるとは思っていなかった。
しかも、5・7・5の俳句。
あれ?俳句で有名な松尾芭蕉より俺が先ってなんかマズいような気もするが、良いのか?
名歌生まれないルートになるのか?
大丈夫なんだろうかと考えながら、馬を進めた。
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