第218話 領内巡察・笠間城
次の日には笠間城に向かう。
おそらく今回の一番の問題は高山右近だろう。
水戸城からは街道が整備され馬で山道をゆっくりと二時間で到着する。
笠間に入るともちろん、笠間稲荷神社に参拝するのだが、荒廃が酷い。
高山右近、やはり神社には手を着けなかった様子。
宮司に3000石の寺社領の覚え書きを渡して寺社にすぐに整備をする事を約束し、政道に手配を頼んだ。
高山右近、キリシタンなのはわかるが任せた寺社町くらいの整備はして貰わなければ困る。
笠間稲荷神社から南西にある、佐白山が笠間城だ。
笠間城の歴史は意外に古く、常陸風土記によれば黒坂尊が賊を茨で作った城で討ち滅ぼしたとされるのがこの地とも言われている。
それが「茨城」の地名の由来になる。
常陸を下野から守る重要な拠点。
城の大手門では高山右近が出迎えた。
城としての整備は順調に進んでいる様子。
「出迎え御苦労、城の改築は順調だな」
「はい、滞りなく。三の丸の南蛮寺ももうすぐ完成します」
と、案内を受けると三階櫓、小天守と言ってよいだろう立派な建物が建てられていた。
屋根には十字架が乗っている。
「城内に南蛮寺は許可したがこれほどの物を作るとは」
と、少し呆れた感じで言うと、高山右近は、
「東国布教の拠点にする所存です」
と胸を張って言った。
「信仰の自由は認めるが、命じた事はやって貰わねば、笠間稲荷神社の荒廃が酷すぎる」
「しかし、ながら他の神の建物に私が加わるわけにはいけません。アーメン」
て、胸で十字を切って祈りだしてしまった。
「笠間稲荷神社は、伊達政道に任せるからくれぐれも争いなきこと、それと念を押すが改宗の強制は絶対にしてはだめだからね」
「わかっております。さぁ、今宵は、牛の味噌漬けを食べていってください」
と、言われる。
食欲に負けて、これ以上言うのはやめた。
高山右近が作る牛肉に味噌漬けを焼いたものは絶品、食欲に負けてしまう自分が情けない。
もうしばらく静観しよう。
この日は、笠間城に泊まったのだが、宗矩がやたらと警戒していた。
高山右近、要注意人物のようだ。
仕方がない。
次の日には、日があけると同時に出立して、再び大洗で南蛮型鉄甲船艦隊に乗船した。
うちの領地で安心して寝れる場所はまだまだ少ないようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます