第217話 領内巡察・水戸城

 鹿島城から出向して大洗の海岸に接岸した。


大洗磯前神社・酒列磯前神社の両神社を参拝する。


まだ手付かずだが、両神社には2000石の寺社領を寄進する。


鹿島神宮の改築が終わればこちらを左甚五郎に頼もう。


参拝が終わると、山内一豊が迎えに出向いていた。


大洗から水戸までは街道が整備され馬で2時間もしないで着く。


水戸城も改築中で、どこなく平成史実歴史線で見た掛川城に似ている小ぶりの天守が建築中だった。


北は那珂川、南は千波湖のあれ桜川湿地帯を外堀とした城。


城そのものは高台にあり、それより西の高い大地が街として整備されはじめていた。


まさに平成史実歴史線のような水戸の街だ。


那珂川がすぐそばでも氾濫しても街は沈まない縄張りだ。


「一豊、なかなかの街と城を作ってくれているね、これなら常陸国を南と北と西と東を結ぶ拠点には申し分ない」


「はっ、ありがたきお言葉、千代が走り回って土地の高低差を調べて作りましたので、さあ、今夜はこちらでお泊まりを」


と、案内されるが宗矩がしばらく待てと大手門を潜ってから言う。


俺は玄関の階段に腰をかけて待つ。


30分ほどすると


「大丈夫です」


と、言われる。


山内一豊は当家では新参者、何があるかわからないということなのだろうが、疑われた一豊は不機嫌な様子。


「あなた様、黒坂家では我らは新参者、当然のこと、むしろすべてを開け放ち見て貰うことこそが肝要」


と、千代が言っていた。


「すまないな、信用はしていないわけではないが、念のためだ」


と、宗矩が言う。


そう言う事は宗矩に任せてあるのでおれは口を挟まない。


特に仕掛けなどもなく、護衛の兵も怪しいくらいにはいないらしく、水戸城にようやく入城した。


夕飯には海の新鮮な幸、刺身を期待していたのだが、全て火が通っていたのは山内一豊らしいと言えばらしいのだろう。


「かつをの刺身」を禁止したことで、「かつをのたたき」が生まれるのだから。


意外かもしれないが常陸(茨城)も夏になればよく、かつをは水揚げされるから、「かつをのたたき」土佐名物ではなく常陸名物になるかもしれないな、と、思いながら夕飯を食べた。


このまま、水戸城は一豊夫妻に任せて大丈夫のようだ。


引き続き東西南北をつなぐ街道の整備を命じるくらいである。

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