第216話 領内巡察・鹿島城
家臣登用がひと段落下ころには桜の花が咲き始めていた。
俺は毎日、茶々の大きくなるお腹をさすっては執務、さすっては執務とこなしていたが、茶々に、
「領内巡察に行かなくて良いのですか?鹿島・水戸・笠間・五浦に城を築いているのでしょ?任せたままになっていますよ」
と、注意されてしまった。
「城を離れても大丈夫か?」
と、お腹をさすりながら言うと、
「真琴様はお腹の子の父親であると同時にこの国の領主なのです。疎かにしてはいけません。なに、皆が支えてくれていますから大事無いですよ」
「そ、そうか、正直見回りにはいきたかった。特に笠間と五浦の城が気になる」
「行ってきてください。領内なら何かあっても一昼夜馬を走らせれば連絡ぐらいならできます」
「そうか、そうだな。少しだけ城を離れさせてもらう」
と、茶々の勧めで領内巡察が決まり段取りをする。
森力丸を城に残し、柳生宗矩・伊達政道・最上義康・真壁氏幹そして火縄銃改の南蛮型鉄甲船艦隊900の鉄砲隊が同行となることに決まった。
領内でも、知っての通り関東の乱で火の海にしたのはこの俺。
まだ恨みを持つ者などがいるだろうと言うことで仕方がない。
茨城城の周りなら、高野城も作っているため完全に支配下で安全なのだが、他はどうもそうではないらしい。
しかし、900もの火縄銃改の鉄砲隊がいれば問題はないだろう。
準備が一週間ほどでできると、俺は陸路で鹿島城に向かった。
鹿島城城主は俺の重臣・柳生宗矩、何も心配することはないはず。
吊り天井などと暗殺の心配はない。
鹿島に行くと城よりまず鹿島神宮に参拝をした。
一度、入国して鹿島神宮に参拝しているが、その時には荒廃しきっていた神宮も城と同時に改築・修繕が始まっていた。
鹿島神宮では、左甚五郎と狩野永徳が茨城城がひと段落したのでこちらで働いている。
今回は俺は、俺の趣味の萌美少女は指示していない。
指示していないが、門や神殿の飾りをよくよく見ると、神獣の中に美少女化した麒麟・朱雀・白虎・青龍・獅子や十二支が隠れている。
本当に俺は指示を出していないのだが、挨拶に来た左甚五郎と狩野永徳は『やってやりました!』と、言わんばかりに胸を張っていた。
鹿島神宮・武御雷様、申し訳ない、ごめんなさい。
しかし、よくよく見ないとわからないのはこの二人の遊び心なのだろうか。
露骨な物だったら作り直しを命じた物なのだが。
ただ、一つだけ指示を出した。
「要石にだけは触れるな」、と、後はこの二人に任せておけば荘厳な神宮が完成するだろう。
鹿島神宮には寺社領として3000石を与えた。
当家の守り神になっていただく。
改築されている鹿島城は海に直結する海城として大きく縄張りを変更している。
俺に三隻・南蛮型鉄甲船があるが、その基地となる港がここだからだ。
ゆくゆくは異国との貿易港としても使えればよいのだが。
城その物は質実剛健、宗矩らしいと言えば宗矩らしく飾りっ気のない城で天守と言うほどの建物もなければ、櫓も柱だけの物見櫓がある程度だった。
兵士の修練の場となる広い庭と、広い道場が印象的な城になっている。
「宗矩、もう少しお金かけて良いから、金は力丸に出させるよう言うから、守りを固めて、それと海の見張りとなる天守はやはり必要だから、通常は最上階で灯りを灯して灯台の役目を持たせれば決して無駄な建物ではないから」
「はっ、すぐに取り掛かります。茨城城や他の城で多大に金子を使ったかと思い必要最低限の城にしたのですが」
「知っての通りうちには金はあるから、こんな大事なとこを宗矩だから任せられるんだからね。もっと堅牢な城にしてよいから、宗矩だからこそ頼めるんだから」
「はっ、もったいなきお言葉、期待に応えられる城を築きます」
どうも、城も細かな指示を出さないと城主や城代の考えの城になってしまうようだ。
俺の茨城繁栄の要となる城なのだからそこそこの城にしてほしい。
水戸城・笠間城・五浦城も心配になってきた。
この日は鹿島城に一泊したのち、次の日、南蛮型鉄甲船艦隊で北上した。
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