第214話 柳生宗矩と小野忠明

 史実歴史時間線では江戸幕府剣術指南役は、柳生新陰流の柳生宗矩ともう一人、小野派一刀流の小野忠明がいる。


その小野忠明も当家の家臣登用に応募してきたのだが、試験を一任している宗矩とひと悶着あった。


無刀取りで相手の太刀筋を見ながら人の成りを見極めるのが、宗矩の試験だったのだが、剣に自信満々の小野忠明が、無刀の宗矩に、


「嘗めているのか!」


と、激怒したらしく、宗矩は仕方なく木刀を手にした。


そして、木刀対木刀の試合で一手目で素早く小野忠明の喉元すれすれに木刀を鋭く立てた宗矩で、その瞬間勝敗は決したのだが、納得がいかない小野忠明は真剣で斬りかかってきたらしく、それを宗矩は得意の無刀取りで刀を奪って小野忠明を投げ飛ばしたらしい。


宗矩も瞬時の事だったらしく、手加減が出来ずに勢いよく投げ飛ばしてしまい小野忠明は骨折をした。


しかも、両手を。


小野忠明は史実歴史時間線では、稽古の立ち合いを申し込んできた大藩の家臣の両腕を再起不能になるまで叩き潰し、それが徳川秀忠の耳に入ると秀忠は、「指南役として何たること」と、怒り蟄居閉門を申し付けられそのまま晩年を過ごし死亡している。


宗矩が試験をせずとも、小野忠明の名は知っていて性格に難ありなのは知っているので、その名を聞いた段階で当家の家臣に雇うことはしないのだが、試験を一任していたのだから仕方がない。


取り合えず、治療費を渡して解放したのだが、それが良くなかったようで、小野忠明は、


「試験は寄ってたかって袋叩きにあって、それに耐えられた者が採用されるんだ」


などと、吹聴した。


・・・・・・。


そんな噂は、慶次から耳に入る。


「城下でその様なことが吹聴され、黒坂家の為になりません。御決断を。首を縦に振ってくれさえすればよろしい」


慶次が、そう言ってきた意味は捕縛なのだろうと思い首を縦に振ると、


翌日、小野忠明は霞ケ浦に浮いて発見された。


・・・・・・俺に聞いてきたのは暗殺の指示だった事をあとから知った。


慶次と幸村と宗矩と政道の配下の忍びが夜中こっそりと霞ケ浦に沈めた。


何気に家臣の家臣には忍びが多い。


慶次と幸村に忍びの家臣はいるのは知っていたし、宗矩には当然のごとく裏柳生の忍びがいる。


そして、政道には黒脛巾組の忍びが政宗から使わされている。


その者達の選りすぐりが行えば暗殺など容易い。


知られざる当家の実力。


やってしまった。


意味も分からず返事をするのではなかった、と、後悔するが、茶々が、


「当然のこと、天下の副将軍のありもしない悪口を吹聴する者は死罪は当然のこと」


と、怒った様子で言っていた。


時には鬼にならねばならない時もあるのだろう。


兎に角、小野派一刀流の系譜はなくなった。


この事件の後、家臣になりたいと言ってくる者はいなくなってしまった。


もう少し家臣欲しいのだけど仕方がない。


このメンバーでしばらくはやっていくしかないようだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る