第194話 農政改革第一弾・じゃが芋
高野城もほぼ完成に近づき、幸村は農政改革の仕事にも力を入れ始めていた。
常陸国は坂東平野、畑にする土地はあり、湿地も多く、開墾すれば米どころになる。
実際、平成の世なら生産量トップ5に入る茨城県は関東屈指の米どころなのだ。
野菜や果物だって生産量ランキングには『茨城県』は、意外にもいろいろな作物で上位になる地。
近江から移り住んだ者に新たな開墾地の減税政策で、開墾の推奨を勧めている。
ただ、米に偏らないよう注意しながら事を勧めないとならない。
米、小麦、大麦、そば、とうもろこし、豆、稗、粟、黍、芋の10品を重要作物と定め中心に力を入れる。
そんな中、収穫したばかりのとうもろこしを炭火で炙って醤油を塗って食べていると、幸村が笊に見慣れた芋を乗せて台所に持ってきた。
「御大将、ようやく収穫できました。南蛮から手に入れた芋でございます」
「おっおー、じゃが芋だね。実ったんだね」
笊に乗せられた土がついている、じゃが芋。
「御大将はこの作物を知っているのですか?」
と、今井宗久から手に入れて栽培に励んでいた幸村が言う。
じゃが芋、今井宗久に頼むと南蛮交易船から手に入れたらしく、俺の知っているジャカルタルートではなく、コロンビアルートで入手したとのこと。
そうなると、じゃが芋ではなく、コロ芋なのか?
まあ、ポテトはポテトだ。
「あっ、うん、えっと、まぁー、うん」
言葉に詰まる。
「御大将が謎の知識を持っているのは知っていますから、そんな困った顔をしないでください。それより、知っているなら、食べ方、料理の仕方はいかがいたしましょう」
と、じゃが芋を桜子に渡した。
「桜子、その芋は使う時はよく洗って、芽が出ていないか確認してね、芽が毒だから食べてはいけないからね、で、食べ方は茹でる・蒸す・油で揚げる、で、塩をかけて食べるとかが簡単でそのままの芋の味でも十分に美味しいから」
「わかりました。では、先ずは味見に茹で上げますね」
と、言って洗って煮始めた。
「竹串を刺して、すんなり入るようになれば食べられるから」
と、言うと程々の頃合いでゆで汁をこぼして湯気が立つじゃが芋が、俺の前に出された。
皮を剥いて、塩を一振りしてほうばる。
「あっちち、ホフホフ、美味い、おーちゃんとじゃが芋、幸村も桜子も食べて」
二人も同じようにして食べる。
「おー、ホフホフホフホフ、里芋とはまた違った風味で美味ですね」
幸村は蒸気機関車のように口から湯気を出して食べていた。
「本当に美味しいございます。醤油で煮ても美味しそう」
と、桜子は言う。
じゃが芋と言ったら、あれが食べたい。
マック派、モス派に分かれるであろうフライドポテト。
俺は細いマック派なのだが、今はそれを求めるより揚げたじゃが芋を食べたい。
「これを薄く切って油で揚げて欲しいな」
さっそく調理し始めると、みんなが揚げ物の匂いで台所に集まってきた。
「あ、マコ~ずるい、美味しい物独り占めしてるんでしょ~」
と、お江はいつもどうり後ろに回って首を絞めてきた。
「味見だから、初めて取れた物の試食、ほら、桜子が今揚げたてを出すから」
と、薄く切ったじゃが芋をあげてさらに盛り付ける、桜子。
「はい、お江様、出来上がりましたよ」
と、出来上がったポテトチップス。
「うわー、久々、これ美味いんだよな、やめられない止まらない、どれどれ」
と、ぱりぱりと食べる。
「美味し」
と言うと、お江も食べる。
「わ~この食感がいいね~」
「どれ私も」
と、茶々達も食べ出すと止まらなくなり桜子は次から次に揚げていた。
茨城のソウルドリンク、ドクペを飲みながら食べたいところだけど、流石にそれは無理だし、あぁ、炭酸飲みたいな、と、思いながらポテトチップスを食べていると柱の影から視線を感じた。
・・・・・・本多正純だった。
「正純、遠慮しないで入ってきて食べて」
正純も桜子からポテトチップスを受け取り食べる。
「おー、なんと不思議な食べ物、美味い物を食べられる黒坂家、やはりこちらに来てよかった」
と、涙しながら食べていた。
いや、涙しながらポテトチップスを食べる人初めて見たよ。
「幸村、じゃが芋は比較的寒冷でも作れるから、広めて栽培させて」
「はっ、心得ました」
じゃが芋は間違いなく普及するだろうと今日のみんなの試食の感想で感じた。
飢饉対策に一石を投じることが出来れば良いのだが。
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