第186話 副将軍

 正月が終わってはしまったが、一応新年の挨拶と現状報告と、お願い事をするため安土城に登城した。


もちろん南蛮型鉄甲船を使って大阪城経由で登城する。


出迎えには、いつものように蘭丸が出ていた。


「遅れましたが、新年おめでとうございます。今年も一年よろしくお願いします」


と、挨拶をすると、


「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします」


と、社交辞令の挨拶が返ってきた。


蘭丸とはそれなりに親しい中なので今更の挨拶ではあるのだが。


「天主に案内いたします」


と、今日は立て直しで完成した新しい安土城の天主に案内された。


一人通されると、そこには俺が作らせているだるま型ストーブが設置されている。


天主最上階にだるま型ストーブとは何とも不思議なのだが、装飾が施されて部屋には合っていた。


四方を見る、久々の琵琶湖、近江を眺めている。


東側に見える山にもう一つの城の天守らしきものが見える。


「観音寺山城か?」


と、独り言を言うと、


「来たか、常陸」


と、信長が入ってきた。


新年の挨拶をしようとしたら、「いらぬ」と、止められてしまった。


「そんなことより、良いであろう、観音寺山に新しく建てた城だ」


と、腰の扇を抜いてその方向を指す。


「良いですね、軍事的守備が弱い安土城の補助的城ですよね、大都市、首都になるのだから予備はあったほうが良いですよ」


「だな、あそこには信忠が入る。わしは今年、信忠に征夷大将軍を任せようと思っている」


「世襲を世に知らしめ織田家が政治をする、よろしいかと思います」


「そこでだ、常陸と家康に副将軍となってもらい補佐をしてもらいたいのだ」


「はい?」


「同じことを何度も言わすな、副将軍と言う補佐する役職を作る、補佐してくれるな?」


「安定国家建国の為なら、もちろん協力はしますが、しばらくは常陸の発展に尽力したいのですが」


「常陸は、それをすれば良いのだ。東の地に住む副将軍の都市、発展することは良いことではないか?」


「特に仕事が多くならないのなら、謹んで拝命したいのですが、実は知っての通りうち家臣不足で、高山右近もしっかりと働いてくれていますが、もう少し与力頼めませんか?」


そう、今日は増援をお願いに来たのだ。


「考えてある、前に常陸が名を出した、山内一豊と藤堂高虎を与力として送ってやる」


「よく覚えていますね、結構昔に名前出したのに」


「馬鹿にしているのか?」


と、少しにやけた顔で言ってくる信長。


「とんでもない、自分で言ったのを忘れているくらいなので」


「山内一豊と藤堂高虎なら不満はないであろう」


「はい、もちろんです、これで常陸の東西南北の整備が考えられます」


「そうか、なら、下総も任せて良いな?」


「え?下総は蘭丸の領地では?」


「蘭丸には淡路を任せようと思う、これから南蛮との貿易をさらに活発化するからな淡路に信用出来る者を置きたくてな」


「で、蘭丸ですか?確かに淡路は瀬戸内の重要な拠点ですからよろしいかとは思いますが、下総、他にいないのですか?」


「常陸、幕府要職としての副将軍なら常陸一国では不十分、下総も領地とし、それに見合うだけの兵も蓄えよ。幕府になにか異変があった時に、補佐できるくらいの武力がなくてはならん」


「・・・・・・わかりました。期待に応えられるよう励みます」


常陸一国でもまだまだ何もできていないのに下総も領地、かなり広い。


しかし、ここまで来たならとことん付き合わねばならないだろう。


副将軍と言う肩書に見合う国力・武力を持たねば。


そう考えて返事をした。


俺は、書いた手紙を宗矩に渡し、法隆寺に収めてもらうよう頼み帰路に着いた。

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